6
龍が帰ったあと、俺は即行、優雅の家へと走った。
インターホンを鳴らせば、数秒後に優雅が顔を出す。
「はい。……っ、颯?!」
「ゆ、優雅……!話が、ある、んだっ!」
「…とりあえず、中入れよ。」
「うん。」
コーヒーを淹れてくれた龍はいつものように俺の隣に座るが、心なしか、その距離が少し広い気がした。
それこそ最近の俺ならば少し傷つきながらもその距離を保っただろう。だが、答えの出た俺に迷いは無かった。
カップをテーブルに置き、両手をソファーにつき、ぐいっと優雅に迫る。
俺の行動に動揺したのか、優雅は少し後ずさる。
「優雅!!」
「な、なんだ?」
「お、俺……俺……!!」
またもや感極まって涙が落ちそうになるのをなんとか堪えながら。しかし、言葉を紡ごうとすれば糸が切れて涙が零れそうで。我慢できず、そのまま目の前の優雅の腰に勢いよく抱きつく。
「そ、颯?!」
「俺、優雅と別れたくない!!」
「なっ……」
「勿論、優雅が俺を嫌いなら諦める。でも、俺に飽きたなら飽きないよう努力する!つまんないなら面白くなるし、可愛くないなら可愛くなる!煩いなら静かにするし、邪魔なら大人しくしてる!!だから、だから……」
そうまくし立て、顔を上げ、優雅を見つめれば。やはり我慢できずに涙が零れる。歪む視界の中で優雅が苦しそうに歪む。
「別れるなんて……言わないでっ…………!」
「颯……っン!?」
多分、初めてなんじゃないだろうか。俺は自分から優雅に口付けた。
拙いかもしれない、嫌だったかもしれない、それでも少しでも俺の本気を伝えたかった。
「ごめん、やっぱーーー」
嫌だった?と紡ぐはずの口は優雅のそれで塞がれた。
さっき俺からしたのとは違って、深く優しいそれに俺の脳は甘く蕩ける。
「ん、ふっ……んぁ…は……」
「…ん……、…チュッ……颯…」
「優雅……」
いつの間にか頬に添えられた優雅の手に自分の頬をすり付けながら呟けば、直後、キツいほど優雅に抱き締められた。
「馬鹿やろ……嫌いなわけねぇだろ。ホントはずっとこうやって抱き締めていたい。だが、お前が真を好きなら、って…。」
「龍は好きだよ。でもそれと同じくらい……いや、それ以上に優雅が好きなんだ。」
「…………もう、嫌だと言っても一生手放さないからな。」
「うん。」
「……愛してる。」
「うん……俺も。」
ーーー数日後、実は誕生日が近かった仁のリクエストで俺達四人はスキーに来ていた。
はしゃぐ仁に、マイペースな優雅を眺めながらクスリと笑えば、龍が微笑んだ。
「晴れてよかったね。」
「そうだね。」
「…………幸せでなによりだよ。」
「そっちこそ。」
「そうかな?」
「そうだよ。」
そう言って笑いあった。
end
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