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「俺達付き合うことにしたんだ!」
元気よく言った親友の隣に立っていたのは俺が大好きな人だった。
『Irresolute』
俺と親友の朝霧仁は高校からの知り合い。まだ一年ちょっとの付き合いに関わらず、とても波長が合い、まるで昔からの親友の様に仲が良かった。
そんな仁に突然宣言され、連れてきたのは、これまた高校からの友人である、龍崎真だった。
仁に宣言されたとき、俺は言葉の理解ができなかった。
仁と龍が付き合う……?
胸が痛む。キリキリと。ドキドキと。血が出てないか確認したいくらいだ。
勿論血なんか出てるはずもなく、俺はぎこちない笑顔を浮かべながら、二人を祝福した。
「おめでとう。」
心の中で俺は泣き叫んだ。
「もう少しで出来るから待っててね。」
「あ、俺手伝うよ。……ほら、仁も手伝う。」
「えー……?」
「ほら、立って、」
顔をしかめながら渋る仁を立たせて、料理の準備をする龍の隣に立つ。
今年からそれぞれの誕生日に集まって祝うことにした俺達は、今日誕生日である美作優雅を祝うため、龍の家に集まった。
「ありがとう。」
「いや、手伝うのは当たり前だし。」
にっこり微笑む龍に少し顔を赤らめながらも、それを仁に悟られないよう顔を俯かせる。
「おーい、腹減ったんだけどー」
「もうちょっと待てってば。」
唯一一人リビングで寛ぎながら文句を垂れる優雅に呆れた声で返事すると苦い顔をされた。……何故?
しばらくしてテーブルに料理が並ぶ。皆それぞれの手にコップを持ち、上に掲げる。
「じゃあ、優雅の誕生を祝して、」
「「「「乾杯!!」」」」
俺の音頭で四人のコップの音を鳴らす。
「じゃあ、優、これ俺達から。」
「おー、サンキュー。」
龍から手渡された優雅はそのままガサガサと袋を漁り中身を取り出した。
「お、俺の好きなバンドのアルバムじゃねーか。良く分かったな。」
「そこは、恋人だからね。ね、颯。」
俺は少し顔を赤らめながら頷く。何だろう、恋人と呼ばれるのは照れくさいけど、それ以外に胸が苦しい。
「ありがとな。颯。」
「う、うん。」
ふわりと、普段見せない顔で優しく微笑む優雅に今度は胸が高鳴る。
…………これはいけないことだ。
優雅も龍も好きなんて……そんなの卑怯だ。
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