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私をなめて貰っちゃ困る。
私が椎那にハッキングさせたのは生徒会のデータが詰まった生徒会顧問である篠羽亜依のパソコンだ。
つまり、全校生徒の資料や学園の事情資料などは勿論、今年1―Sの担任で一学年と二年の上位クラスの授業を担当している篠羽の個人的な生徒調査も手に入る。
其処で、一番の問題児として名をあげたのが、私の目の前にいる1―Sの仙道千夏であるという情報など、萌えに使えそうな個人情報や萌え要素――つまり、王道君にホイホイされるだろうな美形候補をピックアップしておいた。
不良さん――もとい、仙道くんは王道君の取り巻きになる一匹狼くんだ!間違いない!腐女子の勘に外れは無い!
「おい…」
「ん?」
いつの間にか、私の胸倉から手を離し、私を見つめていた仙道くんに声を掛けられ、意識を内から外へと移す。
「何故…?」
「何が?」
「俺をし、し…知りたい…?」
「俺に必要な人物だから。」
「…っ……!?」
驚いたように目を見開く仙道くん。
おや?今私変なこと言ったかな?
「知って怖くねーのか!?俺が…!」
「何故?自分から喧嘩は売らないんだろ?しかも、弱いものには手を出さないし。別に俺はあんたと喧嘩したいわけでもないし強いわけでもないから、あんたを敵に回すような馬鹿なまねはしない。そうとなればあんたに怯える必要は無い。違うか?」
「……おま…え」
一気にまくし立てた私の持論に押し黙る一匹狼な不良くん。
まさか、『怖いけど、君は僕の萌え要素候補だからっ!』なんて言えない。口が裂けても――その時は言っちゃうかな?
しかし、問題発生。
「仙道」
「っ…」
「通してくれないか?」
「……は?」
いやぁ、実は仙道くんが道を塞いじゃってたから、行くに行けなかったんだよねー
「行きたいところがあるんだ。」
「……何処だよ。」
「理事長室。俺、転校生だし。」
「……ちょっと待ってろ…」
「…?」
すると仙道くんは懐から携帯を取り出し、徐に電話を掛け始めた。
「―――俺だ。正門前に一台寄越せ。」
えぇっ!?学園内車通ってるんですか!?
それは知らなかった…
「歩いて行くのは無理だ。」
「何故?見取り図は貰ってたから、道には迷わないが?」
「……………此処から10キロはある。」
「……まじかよ。」
どうやら見取り図に騙されたらしい。森を抜けたらすぐの理事長室のある特別棟まではなんと10キロかかるらしい。どんだけ広いんだこの学園。
ということで、私は大人しく、仙道くんが呼んでくれた車を待つことにした。
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