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町外れにそびえ立つ大きな山。
其処は100年以上前から、疾亥氏の私有地であり、その山の中に全寮制男子私立学園、疾亥学園が建てられたのは、今から80年前で、それから10年に一度建て直しを行い、去年建て直しをしたばかりのその校舎はお金持ち学校に相応しいほどの莫大な敷地面積と設備を備えていた。
そして、腐女子に嬉しい情報を差し上げましょう!
ハッキングの得意な椎那(今は小豆)に協力してもらい、事前に学園内を調べて貰いました!ナイス、自分!!
学園内には生徒会と風紀委員会が存在し、両方とも、学園内で行われる生徒ランキングの上位から選ばれるそうな!
そして、さも当たり前のように親衛隊が存在し、原則的には対象者の同意が必要だが、ランキング上位20名には、50名以上の署名、対象者の担任教師の同意を得れば、親衛隊設立が可能だそうな!!
そして、今回一位になった会長こと八島蓮慈は極度の俺様で、親衛隊をセフレ代わりに使うほどの王道っぷりを発揮!!!
勿論、他の生徒会メンバーも王道生徒会街道まっしぐらで、生徒会顧問はなんとホスト教師だそうな!!!!
これで興奮しないことがあろうか!いや、興奮しないことなんて有り得ない!!あ、これ反語ね。国語の古典で良くでるよ!テストに出るよ!!
あくまでも表は無表情に努め、裏でウハウハ言っちゃってる私は今、素晴らしき王道学園の正門前に居ます。
ヤバい!デカいよ!ビッグゲートだよ!
「……さて、どうするかな。」
私の特技はテンションが高くても、冷静に判断が出来て、無表情で居られること。
たった今、学園の案内を担当してくれる人との約束の時間を過ぎてしまいました。
なので、仕方なしに、私は正門に足と手をかけます。
「よいしょっと…」
鍛え上げられていた椎那の身体は身軽で頑丈で、毎日椎那に言われていたトレーニングメニューをこなしていたら、五メートルを超える正門位だったらよじ登れる程度にはなってました。
「…はい。侵入成功っと。ん?入学したんだから侵入にはならないかな?」
何て考えながら、来る前に貰った学園内の見取り図を思い出す。
確か理事長室のある特別棟には森を抜ければ近道だったはず。
私はアスファルトの道路を横に進み、草むらをかき分けて、木々生い茂る森の中へと足を踏み入れた。
………むにゅっ!
「…………ん?」
記念すべき第一歩の感触は柔らかい物の上。
疑問に思って下を見れば、それは人のお腹でした!テヘッ!やっちゃった!!
……………………じゃねぇよぉおぉおおぉぉお!!!?
人踏んづけちゃった!しかも見るからに不良!真っ赤な髪をツンツンに立てたその姿は完全に不良!
このノリツッコミに所要した時間、僅か0.3秒だったので、異変に気付いた、不良さんと顔が真っ青な私の目が合う。
「てめぇ…何してやがる…」
キターーー!!THE不良さんキターーー!!
どうするどうするっ!?確かに運動は出来るし喧嘩も強い椎那の身体だけど、私喧嘩なんかしたことないよ!!
私が慌てる間にも不良さんは身体を起こして立ち上がり私の胸倉を掴み睨みつけた。
「見ねぇ顔だな…俺が誰かも知らねーってか…?」
「え?知ってますよ?」
「………………は?」
あ、ヤバい。椎那は先輩にも敬語使わないんだっけ。でも、これ以上刺激したくないしなー。
「何で知って…」
「そりゃあ、勿論有名だし、個人的にも(萌え要素として)知らないわけにはいかないですから。」
「……?」
彼は益々、意味が分からないと首を捻る。
そんな可愛い反応をする彼を見て、私はついニヤリと笑ってしまう。
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