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「邪魔するな。」
仙道くんは今にも噛みつかんばかりの勢いで睨めつける。シロくんは一瞬たじろいだがすぐに体勢を立て直す。
「じ、邪魔するに決まってんだろ!椎那は俺の親友だ!喧嘩なんかさせるかよ!」
「てめぇ…誰に楯突いてっか判ってんのかよ。」
「知るかよ!でも椎那は俺の親友だ!」
「……」
お…?
「で、お前も俺の友達だろっ!?」
「何言って…」
「争いなんかで友情は生まれねぇ!でも、お前が椎那と喧嘩しないなら、俺が友達になってやるよ!」
シロくんはニカッと爽やかスポーツ少年のように仙道くんに笑いかける。仙道くんは少し赤く染めながら顔を逸らす。
これは…まさかのまさかで、ひょっとしたらひょっとするのか?
「ちっ…」
仙道くんが臨戦態勢を解く。まぁ、大分前から殺気を放っていなかったが。
「……今回はてめぇに免じて許してやるよ。」
「今回じゃない!これからもずっとだ!それと俺のことはシロって呼べよ!」
「シロ…」
仙道くんが愛おしそうに名を紡ぐ。
「おうっ!!」
おぉおぉぉおぉ!!!!!
凄い!これが王道の真骨頂か!ごめんよ黙っていてくれないかなんて言ってしまって!まさか君の王道スキルに助けられるなんて思っても見なかったよ!
「シロ、ありがとな。」
「お、おおおおうっ!」
俺が感謝の意を伝えれば、シロくんは慌てたように返事をする。
これで、一匹狼な不良も攻略したね!!
「ったく…どいつもこいつも…」
そして、夜。
「どういうことだ?」
『……多分、昔やったチームの副総長。』
「多分って?」
『実際に会っちゃいねぇし、どのチームか分からん。』
「そんなにやんちゃしてたのかよ。」
『うるせぇな、誰の所為だと思ってんだよ…』
「族潰しは望んでないけど?」
『そうじゃねぇ…いや、やっぱり良い。とりあえず喧嘩は買ってないんだな。』
「買ってないけど、存在が売ってる。」
『逃げろ。』
「捕まったら?」
『俺の身体だ。捕まらねー。』
「凄い自信だな。」
『ったりめーだ。』
私は受話器の向こうでどや顔をしているだろう椎名にため息をつく。
いくら喧嘩慣れした椎名の身体でも、中身は喧嘩ド素人な小豆だ。これで不安要素が増えたのには変わりない。
「ったく…彼氏作るぞ?」
『んなことしたらそのまま殺す。』
言葉だけでも殺気を感じる椎名にさらにため息が出てしまう。
椎名が一人倒したら二倍の数に目をつけられるぐらい有名なのは知っていた。殆ど学校にも来ないし、たまに昼休みに電話が掛かってきたと思ったら救護要請。
そんな椎那の近くに居る所為か、不良さん達の凄みも睨みも殺気も全く意に介さないのはある意味有り難いが、まさか、こんな辺鄙な所にも敵を作ってるなんて知らなかった。
まぁ、ちっちゃい頃から、彼はやんちゃだったけれど。
椎名と私は性格も容姿も何もかも正反対だけど、この赤茶の瞳は一緒だった。ちっちゃい頃は兄弟かと良くからかわれたものだ。まぁ、私達が無駄に仲良いのもあるかもしれないが。
そのたびに私が言葉で、椎那が力で相手をねじ伏せてきた。うん、カオス。
「……クスッ」
つい、笑みがこぼれてしまう。
懐かしい思い出。それを思い出しただけなのに、少し気分が楽になった気がした。
別に気にすることは無いんだ。
私は私。椎那は椎那。それに変わりはないし、お互いを認識できるのだから。
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