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「失礼しました。」
理事長室で軽い挨拶と資料を申請し、簡単な説明を受けた後、理事長室を後にした。
流石お金持ちは何が何でも庶民とは違うんだなー。
まさか理事長まで格好いいとは…!
中性的な顔立ちに大人の余裕みたいなものを感じられるけど、やっぱり男の人って感じの仕草で、そこのギャップが……美味しいですよね!
王道君ラブで王道展開に絡んでくるのも好きだけど、王道展開の脇で脇役の生徒指導の教師とか、教頭とかに攻められちゃうのも美味しいと思います。ハスハス!
と、若干(?)興奮気味に歩いていると、ふと、気づく。
行きは仙道くんに集中しちゃって気づかなかったけど、やっぱり校内は豪華だなぁ。
青を基調とした廊下の所々に美術館のように絵画がかけられたり、彫刻が置かれたりしている。
天井からはシャンデリアが…
「ほへー…」
ついつい、素が出てしまい、慌てて顔を引き締める。
朝影椎名がゆるゆるほわほわキャラなんてになったら、殺される。椎名に殺される!
そう考えたお陰で少し冷静さを取り戻し、寮へと向かう。
誰と同室なのかなー
平凡くんは王道君と同室決定だから、私的には爽やかスポーツ少年か一匹狼の仙道くんが良いなー。近すぎず遠すぎってね。
そんなことを考えながら歩いていると――第二棟から寮はそこまで離れてないから徒歩でもいけるんだぁ――不意に声が聞こえた。
といっても、大分離れてるけどね。
普通聞こえない距離でも、聞こえるものがある。いや、正確には反応する。
それはもちろん…
「フフッ…私の演技に気づくなんて…君を好きになってしまいそうだ…」
「な、何言ってんだよ!!男を好きになるとか変だぞ!!!?」
「フフッ、そんなこと言ってられないぐらいに夢中にさせて差し上げますよ…」
駆けつけた私は茂みに隠れて二人を見守る。そう、私は腐女子レーダーに引っ掛かる会話に対してだけ地獄耳なのだ!
演技ではない笑顔で笑いながら副会長の近川拓流は王道君を口説き、顎に右手を添え、上を向かせる。
そして、そのまま王道君へ顔を近づけ…
「……戻るか…」
私はあくまで冷静に、表情を変えずに踵を返す。そして、その直後に叫ぶ。
『王道展開キィィイタァアァア!!!!』
もちろん、心の中でね。
この疾亥学園にそろそろ王道君が転校してくるのは事前の調べで分かっていた。
まさか、同日とは思わなかったけど。
私は自分の運の強さに感謝する。まさか王道展開その一の『副会長の演技を見破り副会長から告白&チューイベント』を死ぬまでに見られるなんて…嗚呼、鼻血が出そうだ…ありがとう神様!!
私は覚めやらぬ熱もそのままに、今度こそ寮に向かった。
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