そのままで
「よし呑もうじゃないか。」
酒を片手にニカッと笑った沙遊奈は俺の肩を抱く。
「さっき新年会で呑んでただろうが。」
「でも呑みたい。」
「俺ァ、呑みたくねェ。」
「じゃあ、水でも飲んどけ。」
執務をする俺の隣に腰を下ろすと、何処からか持ってきたコップになみなみ注いで俺に手渡す。いや、今、水でも飲めって言ってたよね?
「土方ァ…」
「…んだよ。」
「……………へへっ、何でもない。」
「はぁ?」
程よく酔いが回ってきて、呂律が回らなくなった沙遊奈の仕事の愚痴を聞きながら飲んでいたら、急に真剣な声で俺の名を呼んだ。
「……愚痴ついでに聞いてやらァ。」
「…言いたくない。」
「何なんだお前は。」
「…へへっ。」
悪戯に笑う沙遊奈に胸が締めつけられる。
昨日、此奴が総悟に告白されているのを見てしまった。何時もの調子でなく、柄になく真剣そのもので。それを感じた沙遊奈も顔を赤く染めていたのを覚えている。
「…っ……」
不意に沙遊奈の頭が俺の肩に触れる。沙遊奈の柔らかな髪が俺の頬を擽る。
胸がこれでもかと高鳴り、身体中の熱が顔に集まるのを感じる。
規則的な寝息が唯一の救いだろう。
俺は恐る恐るながらもゆっくりと沙遊奈の髪を梳き、撫でる。
その時、少し身じろいだので、生きた心地がしなかった。
何時も遠くから眺めていた存在が今こんなにも近くにいるのに、自分の気持ちが告げられる事は無いから、せめてもの願いとして、あともう少しだけ、
そのままで(ん……ひじ…か、たぁ)
(ククッ……寝ぼけてらァ。)
(…………好きぃ…)
(…っ…!!!?)
list/
top/
name