いいこ
パチャンッ…
ギャハハハ…!
嬉しそうに見下す笑い声と、濡れて滴る髪の毛。浸透した水が肩を冷やしていく。
「だせぇっ!!」
二階の窓から投げた生徒達は見下した目で叫ぶ。
教師としてどうかと思うかもしれないが、俺はイジメを受けている。
根暗な性格と小さな声、丸まった背中に目元を完全に隠す前髪、そして学生時代から使っている瓶底眼鏡。これが原因だ。
「………調子に乗りやがって…あのクソ餓鬼共がっ…」
男子校である此処は、生徒教師関係なく、強いものが上に立つ。
元より目立つのが苦手な俺は、本来の性格を隠して生きてきた。
しかし、気づけば、今は弱者扱い。
そろそろ限界かなと笑いながら、濡れた髪の水滴を払う。
「使え。」
「えっ…?」
不意打ちでタオルごと頭を乱暴に拭かれ、後ろを振り向けば、校内でもトップクラスの不良くんがいた。
「えと…」
「ったく…教師ナメるとか生徒として終わってんだろ…大丈夫か…?」
「………」
グチグチ良いながら俺の頭を拭く強面を間抜けに口を開けながら見上げる。
目の前の此奴は、どんな教師の言うことでも一切聞かないことで有名の筈なのに。
だから、つい、作るのも忘れて呟いてしまった。
「……人の事言えねーだろ…」
「あ゛?」
「クスッ…いや、なんでもねぇ…お前いいこだな。ククッ…」
「っ……!?…おま…キャラ違…」
「……秘密な?」
と、イタズラに笑えば、目の前の不良は顔を真っ赤にした。
いいこ(猫かぶってたのかよ…)
(似合わねーか?)
(べ…別に………寧ろそっちの方が…ごにょごにょ…)
(ありがとな)
(…っ……)
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