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社会人×大学生パロ











今日は久々に早く目が覚めた。
すぐとなりの布団ではヒートが寝ている。ヒートは家庭的に大学へ入ることが難しく(俺よりも頭がいいのに)、料理店のシェフをやっている。勿論職人とかそんなに大層なものではないけれど、実際ヒートは料理が上手いし手先が器用なので職場でも重宝した存在のようだった。
性格も良くルックスも良いので女性の間ではちょっとした話題らしい。(これはレアンから聞いたのだけれど)
でもヒートはいつも、俺には晴矢だけだと言ってくれるので安心は出来る。酷な話だが、この前ヒートが可愛い女の子をこっぴどくふったのを目の前で見た。…あの時の女の子の顔は一生忘れないと思う。





あまりヒート本人は言わないけれど料理を作る仕事は相当重労働らしく、毎日夜の11時やら12時、遅いときには2時近い時間に帰ってくる。後片付けや食材の調達など、面倒なことも多いようだった。それでも店長に誉められたと言って帰って早々抱きついてきたときは、この仕事が好きなんだなぁと感じた。あの時のはにかんだ幸せそうな顔は、とてもレアに違いなかった。…何故なら幼なじみの俺でさえ今まで一度も見たことが無かったから。すごく格好良くて可愛くて見惚れてしまった記憶がある。こんなこと絶対本人には言わないけど。




ヒートは帰ってからご飯も食べずに寝る(さっきのように相当ご機嫌だった時は一緒に飲んで寝るが)。死んだように眠るので不安になる。し、寂しくもある。でもくたくたに疲れて帰ってくるヒートにかまえなんて、そんなに子供でもなければ鬼でもない。
休みはほとんど重ならないけれど、たまにかぶる少しだけの時間が幸せだった。





今あまり朝早く起こすわけにもいかず、しかも何もすることがない(魔のレポート提出は昨日終わらせた)のでひたすらヒートをじっと見てみる。整った寝顔に思わずつばを飲み込むけど俺は変態じゃない、絶対違う。

綺麗だと思った。透き通るような肌がもっと見たいと近づいた瞬間、温かい手が後頭部を掴んだ。怯んだ一瞬のすきにヒートと俺の唇が当たる。あ、と思ったときにはもう遅く、目を見開くとマリンブルーが目にとびこんできた。


(……芸術品だ。)



柄でもないことを考えながらキスに溺れる。流石に辛くなってきて意識とびかけで唇を離す。酸欠で息は切れ切れだった。視界がぼやける。



「……っお…まぇなぁ…!何す、」



「おはよう」



「…………っ」



ヒートの、あのはにかんだ顔に何も言えなくなった。どころか腰が抜けてその場にへたりこんでしまう。動けない。うわ間抜けだ、死にたいとか思いながら立つために四苦八苦しているとヒートが俺のところまで歩いてきた。しゃがみこんで、にこにこしながらずっとこっちを見つめる。恥ずかしくて目を逸らすとふふ、と笑う声が聞こえた。




「な、なんだよ上機嫌だなお前…」



「朝一番に晴矢とキス出来たからな。………それに」



「……それに…?」



「晴矢が弱いのは俺の笑顔だって分かったからな」





ヒートが目を細めていたずらっ子のように笑った。
………うわ最悪だ。ヒートの顔を見ないように両手で顔を隠すと手首をふわりと掴まれる。晴矢、手どけてくれないか?と優しく諭されるがもちろんそんなことしない。だって、これ確実に顔真っ赤…!




「晴矢、顔を見せてほしい」



「……やだっ」



「晴矢にキスがしたい」



「………やだぁ……」



「晴矢の可愛い顔が見たい」



「………嬉しく、なぃ…」





なんだこいつ!普段はこんなに強引じゃないくせに。

でも、嬉しくないだなんて嘘だ。本当はすごく嬉しい。いや他の奴に言われても嬉しくもなんともないけどヒートに言われるのは特別だ。手の力が抜けて視界がまたマリンブルーに染まる。綺麗、もう息が詰まるほどに。




「ふふ、顔が真っ赤だ。可愛い。」



「うるせー………ん、」



触れるだけのキスを貰って、顔がさらに熱くなる。あー…熱い、熱い…
……

なんだかんだヒートも我が儘で、俺もヒートに甘いのだと思う。足も手も力が入らないままヒートの布団になだれこむとヒートはため息をついて布団をかけてくれた。すかさずヒートを布団に引き込む。目をぱちくりさせたヒートを見てやった、と思った。




「また寝ようと思って」



「俺はもう寝れる気がしないんだが…」



「いいんだよ、付き合え」








ヒートはしょうがない、と言いながら向かい合って体を抱き締めてくれた。温かい。この時がずっと続けばいいのに。



俺はヒートにいつもお疲れ、と呟いて眠りに落ちた。額に温かな柔らかいものが触れた気がしたが、そのまま熱に溺れることにした。














ずっとは一緒にいられない、けど。
(仕事なんて苦にならない、待ってくれているお前さえいれば)








































リクエストもの。











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