text | ナノ





1大人涼野と南雲
2ねこガゼバン
3涼南←ヒロト
4ヒロト×晴子






「俺さ、お前のことさ、好きだったよ」




チームカオス、チームファイアドラゴン。そのどれもがとても懐かしい親しみ深い名前で、かつての私たちを飾ったものでもあった。私はファミレスの一角でこれまた懐かしい面の男と向かい合って座っていた。


ファミレスは平日の午後四時過ぎという微妙な時間帯でもあって、人は殆どいない。私はうんともすんとも言わず彼の次の言葉を待った。




「戦友、みたいな感じだったのかもな。あの頃にしてみれば勝利が全てだったから、勝てれば何でもよかったのかもしれない。お前がいても、いなくても。」


「……………。」


「でも、確かにお前がいると、心強くなれたんだよ」



この男は一体何が言いたいんだろう。私は黙ってコーヒーを啜る。目の前の男は外を見た。あの頃と何もかも変わらない、筈はなかった。大きくなった手、だいぶ骨張った顔の輪郭。変わらなかったのは無造作に整えられた赤い髪と、双眸の深い色。




「なぁ、世界は常に変化してる。お前はあの時とても悔やんだけど俺は今ならジェネシスにならなくてよかったと思える」


「そんなの、今更だ。あいつだってなった事後悔してるだろうさ」


「いいや、してないねあいつは」


「何故」


「幸せになれたから」






外から車のクラクションが聞こえた。そして訪れる静寂。カフェオレを口に運ぶ動作に妙に色っぽさがあって、こいつも大人になってしまったのだとひとりでに落胆した。不意にあの頃に戻りたくなった。不幸な境遇ではあったけれど、それなりに、本当にそれなりに生きていた。辛い事ばかりで毎日が苦しかったけれども、それでも乗り越えられた。どうして?
そんなこと、分かり切ってる。




「…私も、幸せだよ」



私の言葉に目の前の奴は目を丸くしてから、へえ、とだけ言った。









俺たちに幸せなんて訪れることはないと思っていたのに
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夢をみた。すごくくだらない夢。ヒロトによく似た神様が降りてきて、何か欲しいものはありますかと聞いてきたんだ。夢の中の私は馬鹿だ、ジェネシスの称号と言えばよかったのに猫が飼いたいだなんて言ったんだ。可愛い猫が欲しい、と。

分かりました。とヒロト似の神様が帰っていった。夢の中の私は何も貰っていない。どういうことなんだ、可愛い猫はどうしたと考えているうちに目が覚めた。無性にヒロトが殴りたくなった。




「………くそ、寝覚めが悪い」



と、その時頭の中でヒロト似の神様の声がした。プレゼントを持ってきましたよ。


猫なんてどこにもいないじゃないか…。というか夢のネタを現実世界まで持ってくるとは私も疲れているな。寝るか。
ベッドに再び寝転がろうとしたら、後ろからどすん、と何かが落ちた音がした。何事だ、プレゼントか!しかし猫にそんな乱暴な扱いは………!



「いてて………!」



猫耳と尻尾の生えたバーンが、そこにはいた。




「……………………。」


「あ!?ガゼル!?…何で俺ガゼルの部屋にいるんだ?まあいいや、お邪魔しましたー」


「待て待て待て待て」



本人は異常に気付いていないのか。私はバーンを無理矢理洗面所に連れてゆく。バーンは鏡に映った自分を見て絶句した。



「………………!」


「ご都合主義だから仕方ないな」


「何の話してんだよ…!仕方なくねえよ!」


「本来ならここでラブシーンが始まるんだけど、どうする?」


「俺は人間に戻りたいです」


「尻尾の付け根が感じちゃうのが王道なんだけど、触ってもいい?」


「うぜえ死ね」



冷たいな。にゃんともごろごろとも言ってくれない。やはりnsnの小説だ、そう易々とはいくまい。しかしヒロト似の神様のプレゼントはこれか。率直に言うと、残念だ。癒される子猫が欲しかった。



「…何かお前失礼なこと考えてねえ?」


「自意識過剰だよ」


「あ、そう」



うわ本物だよ、と自分の耳をつつくバーン。ゆらゆら、ゆら。揺れる尻尾はふわふわしてそうで思わず触りたくなる。しかし黒猫か…王道だが、黒猫はいい。これで鈴のついた首輪があれば完璧だ。これでご主人様と呼ばせるように躾ければ言うこと無し。ただの楽園。



「ご主人様のミルクが飲みたいです、で天国だ」


「お前の頭の中で何が繰り広げられていたのか考えたくもないな」



……可愛くない猫だ。おい神様。贈るプレゼントを間違えたぞ。



「はー、どうすっかなー…帰れねーよこんなんじゃ」


「だからヤったら大抵元通りになるんだ!ヤろうバーン!私は準備万端だから!」


「やだ!お前俺の精神状態最悪なんだよ!今そんなことされてみろ!レイプ目のバットエンドだぞ!」


「そんなのはアイキューの部屋にあったゲームだけで十分だ!…だってことを起こさないと元に戻れないだろう?」


「…………確かに…」


「さあ、ヤろう」


「お前キモイ」





‐‐‐‐‐‐‐ヤった‐‐‐‐‐‐




「戻んねえええぇぇぇぇぇ」


「ごちそうさまでした」


「最悪!ヤリ損じゃねえか!ガゼルしかいい思いしてない…畜生…」


「いつもより感度よかったよ」


「最低、キモイ、だいっきらい」



……………やらかした…。



「ごめんね?…でも耳に息吹き掛けた時凄く締まったからバーンも気持ち良かったのかなって」


「屑、燃えろ、死ね」



…………相当やらかした…。何だこれ。好感度パラメータ絶対下がってる。




「…うーくそー戻りてえよ…。何でこんなことになったんだよ…。」








にゃんにゃんにゃんに間に合わなかった
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初めて晴矢が泣いてるのを見た。彼は何をされても泣かない人だったから。殴られても、酷い言葉を投げ掛けられても。そんな彼が泣いていた。頬を赤くして。


誰に殴られたかなんて、聞く迄もない。




「もう……俺…涼野がわかんねえよ………」




ほら、やっぱりね。そんなことだろうと思ったもの。晴矢は自分の事で泣きやしない。


別れちゃえばいいのにな、と思う。そしたら俺が晴矢を独り占め出来るのに。なのにね、気丈に晴矢が踏ん張っちゃって別れるところまでいってくれない。言っちゃおうかな。風介は晴矢の事愛人くらいにしか思ってないよ。本命は別にいるよ。
……………まあ嘘だけど。


だってそのくらい言わないとあの二人は終わらない。何で分からないんだろう。相性が悪いのなんて、俺から見てもわかるのに。
好きだと何も見えなくなるの?…殴られてさえいるのに?




「馬鹿みたい」


「……………え?」


「馬鹿みたいだよ。ねえ、何で泣いてるの。好きなんでしょ?なら泣かないでよ。乗り越えてよ。何ヵ月付き合ってんのさ」


「……………ヒロト…」


「ほんと…俺まで悩まなきゃいけないとか…やめてよそういうの…」




何で仲を保とうとするの?
馬鹿みたいなのは俺だ。





すずのは奪い取るタイプだけど、ヒロトは出来ないと思う
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風花の家にお泊まりに行っていたときだ。あたしはその男の事が気になって風花にその男について何か知っているか聞いた。途端風花は不貞腐れたように私の彼氏だった、と吐き捨てた。そして続けて過去を消し去りたいかのように強く言い切ったのだ。


「あいつは、モンスターだ」












先日あたしは何かの罰ゲームで、教室に最初に入ってきた男に告白をするという拷問を課せられたのだった。そしてクラスメイトがにやにやと待っていた矢先、最初に教室に入ってきたのは。





「あっ、あたしと付き合ってくださ…、……!」


「……………へえ?」



学年一勉強が出来て学年一顔の良い、基山ヒロトだった。




「…………何これ、ドッキリかなんか?」


「………………」


ヒロトがクラスメイトを見回している間、あたしはヒロトの方を見ることが出来ずクラスメイトに目で助けを訴えた。しかしクラスメイトは大丈夫、ふってくれるから!と最早責任転嫁だ。基山はふう、とため息をついて俺の肩を叩いた。え、と振り向くと至近距離でいいよ、と呟いたのだ。




「付き合ってあげる」



勿論驚いたのはあたしだけではない。クラスメイトは呆然とこちらを見ていた。基山だけがにこにこしたままこれからよろしくね、と爽やかだった。
俺はひょんな事からこいつと付き合うことになってしまったのだ。




















「晴子、やめといた方がいい。あいつはどんな女にも本気にならない奴だから。」


「そうなの?」


「遊びの女とはキスもしないから。…私が、そうだった。」


「……風花が…?」



風花は誰が見ても美しいという美少女だった。性格もさばさばしてて付き合いやすい。そんな人で基山が遊んでいたなんて全く信じられないが、風花があまりにも深刻な顔で話すので嘘ではないと思った。





「いけないのは確かに私なんだ。私が好き過ぎたから。…でも、彼は求められると冷めていくタイプなんだよ」


「…ふーん。なら、明日早々に別れるよ」


「その方がいい」



風花は安心したようにため息をついた。やはり、今のあたしには恋人よりも友達の方が大切だ。
思い切って明日別れ話をしよう。あたしはそう思いながら眠りについた。




逆効果
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