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 その場所に、二人の姿はなかった。
 ディノールが毅然と顔を上げて、街道の方を睨みつける。
 ルアもその視線を追いかけた。

 強い風が吹いた、と思った次の瞬間――

 突如、襲ってきた圧迫感は、肌を逆撫でして得体の知れない戦慄を二人に与えた。
「これは……!」
「なにこれ!ゾワゾワ〜ってする!ゾワゾワ〜!」
 目を見開いて硬直するルア。
 そして小刻みに動きながら叫ぶディノール。

 得体の知れないものが、この先にいる。
 顔を見合わせて、どちらからともなく一つ頷く。
 先へ進もうと意を決し、一歩を踏み出した。

 二歩、三歩……。

 重く感じられる足を動かして、わずかに進んだ矢先。
 その気配は唐突に掻き消えた。






 囲まれたことに気づいた。
 けれど、もう動けない。
 腕に抱えた少年の重みは、彼の覚悟を固めた。
「俺も一緒だ。文句はないだろう?」
 軽く目を見張った壮年の男性を、冷めた目で見た。

 詳しい事情はわからない。
 この男が何を求めているのかも知らない。
 だが、求めていた存在に個人として声をかけられた自分を、この一団は放っておくはずがない。

 どのみち追われるなら。

 今ここで、少年と共に内部に踏み込む方がいい。
(いい加減に生きていこうと決めたのに、一体何に関わっちまったんだ俺は……)
 心の中で呟いて。
 少年を抱く腕に力を込めた。







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