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◆
手が、砂をかく。
アルディアをギルドに奪われた悔しさで、目の前が暗く翳る。
やがてそれは怒りに変わり、視界は赤い幻影を見た。
胸の奥に湧き上がる、憎しみ。
ギルドに向けられたものなのか、不甲斐ない自分に向けられたものなのか。
ぎり……と噛み締めた唇の端に、血が滲んだ。
「ルア!」
その、声が。
何故、今聞こえるのかということよりも。
一瞬にして、自分の中の暗い感情を祓ったことに驚いた。
視線だけを動かすと、必死な顔で駆け寄ってくる、見慣れた小さな少年。
「なに……してる……」
呟いて。
ルアは急速に意識を手放した。
倒れたルアを揺さぶって、ディノールは声をかけ続けた。
自分が治癒魔法を使えることも。
身分を利用して助けてもらうということも。
なにもかもが頭の中から消えていた。
もう一人の護衛者がどこに行ったのかも、触れているこの身体が動き出すまで、どうでもいいと思った。
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