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「俺たちは、依り代を探せ、と言われてきました。依り代は見つけた。任務は終わりです」

「……え?」
「ルア……」
 弾かれたように顔を向けるディノールと、額を押さえるアルディア。
 サジルとタナンだけが、今後の展開が読めずに困惑していた。

「じゃあ!じゃあルア!僕、タナンと行ってもいい?」
 喜色満面の笑みで飛び上がった少年の肩を、アルディアがやんわりと押さえた。
「そういうわけには、いきません」
「ええ〜?だってルアは任務終わったって言った!この先は好きにするって意味だよ」
 本人が言っていない部分を断言して、ディノールはアルディアにくってかかった。
「タナンが、このまま帰るってことは、依り代とかいうのがずっと続いちゃうんだよ?アルディアは、それでもいいって言うの?」

 例えば、タナンが依り代になれなかったら。
 いや、なれた方がもっと問題だ。
 彼らは自分たちの方針が間違っていなかったと増長し、犠牲になる子供の数を増やしていくだろう。

「いいとか、悪いとかの問題ではないんです。これに、ギルドがからんでしまった。私には、彼を見逃すことができません」
「……なんで?なんでギルドが入ると駄目なの?アルディアが、そっちを大事に思うのもわかるけど……」
 唇を噛んだアルディアを、ルアは複雑な思いで見ていた。
 アルディアが言うギルドとは、おそらく『ギルド』のことだ。
 あの、若い頭。
 そして、今の台詞でわかった。
 ディノールは、アルディアが何であるかを知っている。
 しかし、重大性については理解しがたいものがあるらしい。
 アルディアが『神性』であるがゆえの、逆らうことの出来ない重圧。

 あの時。
 断ろうとしていたアルディアを制して、勝手にこの話を受けてしまったのは自分だ。

 だから、ここは自分が壁になるしかない。

 ゆっくりと、ルアはディノールに近づいた。
 気づいていないはずはないのに、アルディアは少年の肩を掴んだまま動かない。

 意を決して、ルアがディノールを引き剥がす。
 勢いで、少年は吹っ飛ばされ尻餅をついた。
「いた〜い!」
「行け!」
 文句を言う少年に、ルアが一言。
 一瞬、キツイ口調に身を硬くしたディノールだったが、慌てて立ち上がりタナンの腕をとって走り出した。
 迷ったようだったが、サジルも二人と共に走り去る。
 後には、護衛者として組んでいたはずの二人が、厳しい表情で残っていた。



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