18
■
「俺たちは、依り代を探せ、と言われてきました。依り代は見つけた。任務は終わりです」
「……え?」
「ルア……」
弾かれたように顔を向けるディノールと、額を押さえるアルディア。
サジルとタナンだけが、今後の展開が読めずに困惑していた。
「じゃあ!じゃあルア!僕、タナンと行ってもいい?」
喜色満面の笑みで飛び上がった少年の肩を、アルディアがやんわりと押さえた。
「そういうわけには、いきません」
「ええ〜?だってルアは任務終わったって言った!この先は好きにするって意味だよ」
本人が言っていない部分を断言して、ディノールはアルディアにくってかかった。
「タナンが、このまま帰るってことは、依り代とかいうのがずっと続いちゃうんだよ?アルディアは、それでもいいって言うの?」
例えば、タナンが依り代になれなかったら。
いや、なれた方がもっと問題だ。
彼らは自分たちの方針が間違っていなかったと増長し、犠牲になる子供の数を増やしていくだろう。
「いいとか、悪いとかの問題ではないんです。これに、ギルドがからんでしまった。私には、彼を見逃すことができません」
「……なんで?なんでギルドが入ると駄目なの?アルディアが、そっちを大事に思うのもわかるけど……」
唇を噛んだアルディアを、ルアは複雑な思いで見ていた。
アルディアが言うギルドとは、おそらく『ギルド』のことだ。
あの、若い頭。
そして、今の台詞でわかった。
ディノールは、アルディアが何であるかを知っている。
しかし、重大性については理解しがたいものがあるらしい。
アルディアが『神性』であるがゆえの、逆らうことの出来ない重圧。
あの時。
断ろうとしていたアルディアを制して、勝手にこの話を受けてしまったのは自分だ。
だから、ここは自分が壁になるしかない。
ゆっくりと、ルアはディノールに近づいた。
気づいていないはずはないのに、アルディアは少年の肩を掴んだまま動かない。
意を決して、ルアがディノールを引き剥がす。
勢いで、少年は吹っ飛ばされ尻餅をついた。
「いた〜い!」
「行け!」
文句を言う少年に、ルアが一言。
一瞬、キツイ口調に身を硬くしたディノールだったが、慌てて立ち上がりタナンの腕をとって走り出した。
迷ったようだったが、サジルも二人と共に走り去る。
後には、護衛者として組んでいたはずの二人が、厳しい表情で残っていた。
- 27 -
[*前] | [次#]
ページ:
*感想掲示板*