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「……冗談だろ?」
「君が、依り代……?」
 ぼくを連れ戻しに来たんです、と告げたタナンに、ルアとアルディアは呆然とした様子で呟いた。

 その様子を見て、サジルはこの二人が、すでに依り代についての情報を得ていると知った。
 ディノールが言うように、ギルドで噂を聞いたのだろう。
 ということは、この気配に気づいたギルドの連中が、今までより捜索の手を広げるということだ。
 逃げ切る術は、ないのかもしれない。

「ぼくは、世界が見たかった。……読んだり聞いたりするだけじゃなくて……実際に。それで、ディノールやサジルさんには、迷惑をかけたけど」
「迷惑じゃないよ!僕は楽しいんだから!」
「むしろ、お前さんの方が迷惑なんじゃないかと思うくらいに、引っ張りまわされてたぞ」
「ううん。ぼくは楽しかった」
 微笑んで言うタナンに、ディノールが唇を尖らせる。
「楽しかった、なんて、終わっちゃうような言い方はヤダ」
「ディノール……でも、ぼくは行かなくちゃ」
「やだ。タナンの言うこともわかるけど、でも嫌なんだもん」
 完全に子供の我がままと化した言い分にも、タナンは微笑んでいた。
「……ありがとう。でもね、決めてたんだ。見つかったら、帰ろうって。……誰かが、傷つけられたりしないうちに……」
 最後の方は、小さな声で聞こえにくかった。

 タナンは自分の我がままで、神殿を逃げ出してきたのだとわかっている。
 そのせいで、誰かに迷惑をかけたり、追っ手が誰かを傷つけたりする可能性も、充分わかっていただろう。
 それでも自分の思いを優先させたからには、それなりの覚悟があったはずだ。
 同時に、引き際も、最初から確固としたものとしてあった。

「アルディア〜」
「そんな目で見られても……」
 困惑したアルディアを横目に、ルアは言い放った。
「ディノール様。俺たちは、ギルドから依り代を探すようにと言われています」
「え?」
「予測してらしたのでしょう?……貴方なら」
 確かにディノールは、ギルドもタナンを探すはずだと言っていた。
 しかし、自分の護衛者がその任を負ってくるとは考えていなかったはずだ。
 視線を彷徨わせるディノールに、ルアは続ける。



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