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「神の依り代を探せと言ったって……」
通りを歩きながら、ルアは小声で文句を言い続けていた。
あのお気楽坊ちゃんを探していただけだったのに、何故こんなに話が大きくなったのか。
「悪いな、ルア。変な話になったな」
「いや……俺が聞き出したようなものだし……。それより、依り代が本当にいたことにも驚きだが、まだ奴らは諦めていなかったのか?」
神職者は、神の声を聞くために必死である。
小さな子供を、一切外界と触れさせず、神域と言われる場所に閉じ込める。
外界に触れたら神が降りられなくなる、これは重要な儀式である、と彼らは言うが、それは監禁と何が違うのか。
ルアには違いが全くわからない。
幼い頃から閉じ込められた彼らの精神は、次第に病んでいき物事を考えることを放棄する。
その状態が、依り代に必要な状態だと、いい歳をした大人が口をそろえて言うのだ。
気色悪いにも程がある。
自分がやればいいのだ。
大人だろが子供だろうが、長期間監禁されれば同じような状態になる。
ルアは他力本願な神職者が、昔から嫌いだった。
「お前には信じられないことかもしれないが、あれはまだ続くだろうよ。どこかで何かが起きれば、あるいは変わるかもしれないが」
「何かって」
「そうだな……今回みたいに、依り代が自らの意思で逃げ出すとか」
「ふ〜ん。そういうことをした奴もいなかったのか」
「いないさ。しようとも思わない。いや、思えないんだな」
苦笑する様子のアルディアに、ルアが何かを言いかけたその時。
「よ〜し、次はご飯を食べに行こう!」
能天気な声が、通りの向こう側から聞こえてきた。
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