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 真っ直ぐに『ギルド』を見つめて、ルアは口を開いた。
 表情は相変わらずの仏頂面だ。

「別に、あのお気楽様が記録に残っても、俺たちは全然構わない。むしろその方が、今後のためになると思うから、普段の倍くらいの字で書いてやったら」

「おい……!」
「でも、そっちがどうしても力を貸して欲しいって言うんなら、全然得にならないけど、その条件で多少動いてもいい。ただし、俺たちに対する報酬は加えてもらう。ギルドの問題に、民間人を使おうって言うんだからな」

 民間人、という言葉に、アルディアがわずかに目を見張る。
 しかしあまりにもふてぶてしい物言いに、頭を抱えてしゃがみこんだ。
 ルアは『ギルド』の本性を知らない。
 彼に目をつけられたら、今後ルアの魔法使いとしての道は断たれるかもしれないのだ。

 長いような短い沈黙の後。

 『ギルド』は腹を抱えて笑い始めた。

「え……あの……えぇ?」
 アルディアが、目を白黒させて『ギルド』を見る。
「いいね、君。なかなか面白いよ。うんうん、その論法、何かに使えるかもしれないね。いつの間にか立場が逆転しちゃってる。それにしても、お気楽様とはよく言ったねぇ。あはははは」

 予想もしなかった展開に、アルディアは脱力して床に手をついた。
 ルアの耳に「勘弁してくれ……」という呟きが聞こえる。
「いや、まさか自分の仕える対象にそこまで言うとは思わなかったよ。面白かったから、そうだね……協力してもらう代金として、そこにある魔道具の中から好きなものを持っていっていいよ」
 アルディアは言うに及ばず、報酬を求めたルアまでもが耳を疑った。

 ここにある魔道具は、一般には流通していない。
 ギルドの上層部の中でも認められた者しか使用できない、希少価値の高いものばかりだ。
 驚く二人を楽しげに眺めて、『ギルド』は追加の報酬を口にした。
 ルアを見つめながら。
「さらに、私の気に入る結果をもたらしてくれたら、君が試験なしでギルドの特別待遇を受けられるよう手を回してあげよう」

「……それはいらない」

 本当に嫌そうに言われて、『ギルド』はまたも吹き出す。
「まぁそう言わないで。だいたい、簡単にそんな結果が出せると思ってもらっちゃ困る。私が、気に入るかどうかだからな?」
「……で、何をすれば?」


「神の依り代を、探してくれたまえ」



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