何か情報が入っていないかとギルドにやってきたルアは、見回りに出ていたらしい監視員の会話に、耳を疑った。

 曰く、ラクサーヌ家の子息が、友人のために魔法を使った、と。

 探しているディノールのことであるのは間違いない。
ラクサーヌ家には三人の子息がいるが、魔法を自在に操れるのは今のところ次男のディノールだけなのだ。
 他の二人は、こんな人の多い屋外では集中できずロクに発動できないし、何より友人のため、などという思考に行き着く可能性が低い。

 それにしても、友人、とは?

 また誰かお気に入りを見つけて、あの有無を言わせぬ無邪気さで巻き込んだのだろうか……。
 遅れて入ってきたアルディアに、聞いた会話を伝える。
 アルディアは口を歪めて唸ると、「使いたくなかったんだけどなぁ」と、懐から一枚の羊皮紙を取り出した。
 首を傾げるルアに片目をつむって、一言。

「ご主人には、内緒にしておいて」

 どういうことかと問い返す前に、アルディアは悠然とギルドの窓口に向かって歩いていく。
 一瞬迷ったが、内緒にしておいてくれと言うことは、自分は一緒にいてもいいということだ。
 そう判断して、アルディアの後を追いかけた。
 羊皮紙が、何の威力を発揮したのか。
 民間人は立ち入りが許されぬ領域への扉――ギルドの奥へ続く扉が開かれた。


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