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「僕はディノール。ディノール・ラクサーヌ。おじ……お兄さんは?」
「言い直さなくてよろしい。……ラクサーヌ?」
どこかで聞いた名だ、と考え込む様子の監視員に、別の監視員が耳打ちをした。
「あぁ、ラクサーヌ家のご子息か。魔法が使えてもおかしくはないが……この少年がご友人?」
「うん。僕の友達。ルアって言うんだ」
「むやみに魔法を使うことが危険であり、ここで禁じられているのはご存知ですね?」
厳しくなった声に、少年の肩が落ちる。
「はい。僕の思慮が足りませんでした」
「ご友人のためとはいえ、今後は慎んでください。ギルドと、ご両親への報告は免れませんよ」
「はい。これからは気をつけます」
しおらしくなった少年に満足したのか、監視員たちはその場を離れていった。
様子を窺っていたらしい人々も、ほっとした表情で歩き始める。
友達思いの良い子ね、という言葉もちらほらと聞こえた。
「あの……」
「僕、ディノール。君は?」
「え?あの、えっと……」
「君と僕は同じくらいの歳だと思うし、仲良くなれるんじゃないかな〜と思うんだ!やっぱりこういうところは、友達と楽しく騒ぎながら見て回るのがいいと思うんだよね」
なんとも一方的で勝手な言い分だが、邪気のない笑顔といい楽しそうな口調といい、どうやら本気であるらしい。
面白くないのは、無視されている男である。
「おい、増えた小僧。俺の腕、どうしてくれる!」
「え?僕なんにもしてないよ?」
きょとん、とした顔で返されて、男が眉をしかめた。
「……はぁ?お前さっき、あいつらに僕がやったって」
「あれ、信じたの?おじさん、もうちょっとよく考えた方がいいよ?」
「おじさんて言うな!」
「だってさっきの人が、言い直さなくてよろしいって言ってたよ?」
「それは、あいつに向かっての話だろうが!俺はまだ二十六だ!」
「そうなの?いいじゃん、別に」
「よくねぇ!」
言い合う二人が、あまりにおかしくて。
外に出て初めて、彼は声を立てて笑った。
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