「二人とも、我々に付いてくるように。ギルドで事情の説明を。……その前に、君は帽子を取りなさい。名前は?」
 監視員の手が、帽子にのびる。

(触っちゃダメだ……!)
 直感的にそう思い、少年は身をすくませた、その時。


「さっきの、僕です!」
 緊迫した空気を裂いて、澄んだ声が通り抜けた。


「……なんですって?」
「だから、さっきの衝撃は、僕です。このおじさんが僕の友達をいじめようとしてたから、僕が魔法で腕を叩きました。ごめんなさい」

 隣で、誰かが自分をかばってくれている。
 男の「誰がいじめだ〜!」と叫んでいる声は、全員に無視されているようだった。
 顔を横に向けると、金髪の少年が膝に手を置くようにして頭を深々と下げていた。
 驚きで、声も出ない。
 なんで、見ず知らずの自分のために、こんなことをしてくれるのだろう……。

 監視員がため息をつく。
 明らかに信用していない。
「この場で発動したようでしたが?」
「おじさんたちの勘違いじゃないですか?」
「……なんですって……?」
「あ、ごめんなさい。え〜と、どんなに自分より年上でも、男の人はお兄さん、女の人はお姉さんと言うように。だったかな?」
 謝ってぶつぶつ呟く少年に、男がぶっと吹き出して、監視員が顔を引きつらせた。
 そこを咎めたわけではない。
 勘違い、という言葉が気になったのだ。
「やりなおし!お兄さんの勘違いじゃないですか?」
「……君、名前は?」
 何故か物凄く疲れた声音になった監視員に首を傾げて、少年はにこやかに答えた。



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