「!」
 案内所の奥で大人しく椅子に座っていた少年が、驚いた顔で立ち上がった。

 見ていた中年の男性が、保護者が来たのかと通りを見渡す。
 こちらに向かってくる親子らしき二人がそうなのかと、少年に振り返る。

 途端、脇を影がすり抜けた。
 椅子にはすでに少年の姿がない。

「あ、こら!」
「ごめんなさい!用事ができちゃった!」

 わずかに視線を向けながら走り去る少年に、男性はため息をつく。
 あの歳で用事とは何事か。
 だから迷子になったりするのだ。

 男性は心の奥で、会ったこともない彼の保護者に同情し、躾がなってないとちょっぴり文句を言った。




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