序幕



 それは、人生で最大の幸福










 息を切らせて走る。

 この身は自由ではないから。

 今、ここにあってはならないものだから。

 追っ手は必ず来る。

 だけどそれまでの間、行きたいところに行って、見たいものを見る。

 わずかな時間でもいい。

 自分の好きなようにしたいと思った。


 それは決して叶えられることはないはずの、願い。


 粗末な服を着て、大きな荷物を肩から提げて。

 目深にかぶった帽子が、少しでも追っ手の目をくらませてくれることを祈った。







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