『世界リティーエ。精霊の加護により、世界は結成される。精霊が滅べば、人も滅ぶ。私は精霊の王、精霊と人に害なす存在を滅ぼし、精霊を守り慈しむ』 水面が煌めき、波紋が広がる。祝福するように風が吹き木々が揺れる。木漏れ日はカーテン状に揺らめく。空気は冷気に満たされ、命を奪うかの如く冷たい。薫香が周囲に満ち溢れる。幻想的な雰囲気は、何人たりともその場に足を踏み入れさせない荘厳さが溢れる。 『忠告を無視続け、目下の力に誘惑されて、人の世が未来を見ないと言うのであれば』 鈴の振るような声は徐々に声量を持ち始める。 『私が直接手を下すまで』 水面は映ろう。水面から霧が溢れだすと同時に粒子を生み出す。無数の結晶が水面から映え砕け散るのと同時に、幻想という言葉はこのためにあるのかと思えるほど幻想的な雰囲気を全身から醸し出す人物が顕現した。深紫の髪は毛先に行くほど桜色に近づき最後には真白になる。凛とした赤い瞳は慈愛と残酷の両極面を併せ持つ。深紅の服に身を纏う様はさながら王様のよう。佇むだけで威厳さに満ち溢れている。 『さあ、ゆくか』 水面を歩くたびに、波紋が描かれ、歩む先々には紋様が形造られた水面に変化する。 水面が意思を持って彼の人物を歓迎しているようであった―― 第一話へ |