『妄信だ』 一言。切り捨てられるように。 『盲目して周りを見ることを忘れたおろか者だ』 『末路等決まっている』 決められる定め。 呪詛のような言葉をあいつは馬鹿馬鹿しいと気にも止めない。 ゆったりと椅子に座りながら余裕綽々たる面持ちで彼はカサネに呪詛を紡いでいく。 『お前が捻じ曲げたのだ』 目の前に現れなければ今のように歪むことはなかった。 強硬を止めたいと願いながら離れたくないと望み多くの死者を出す。 彼が彼を手放そうとすれば死者が減ることを理解していながら傍にいて、と切望する。 だからこそ捻じ曲げたのだと。彼の性格を。 カサネは鎖が付属したナイフを片手に黙って青年の呪詛を耳にする。 カサネにこの青年を殺す予定はなかった。彼を殺せば後片付けに少々手間取るからだ。 カサネは時間を無駄にすることを嫌う。時間がないと。 「貴方に何を言われようが構いませんよ。私は……私の目的を貫くだけです」 カサネは言葉を返す。青年に向かって揺らぎない言葉を。 「それが、エレを苦しめる」 「……」 エレの言葉を出された途端カサネは黙る。カサネにとっての全てはエレ。 「エレの為を思って行動するなら、一番はエレの元からお前が離れることだろう」 青年の言葉はある種的を射ている。 何れカサネの悪名はエレの悪名へとすり替わる日がきてもおかしくはない。 「私は私の目的の為に動いているのです。……王子が望めば私は王子の元から姿を消しますよ」 例えそれがどんなにつらくとも、カサネはエレが望めば姿を消す。 ――否、望まなくとも何れ…… ▼後書き カサネと彼(誰か)の会話。語り部はシェーリオル。 |