『転入生』 学園に転入生がやってくるのは別段珍しいことではなく、むしろあたり前といっても差し支えはない。 この学園は優秀であれば誰だって入学できるのだから。犯罪者だろうが、何だろうが。それはある意味恐ろしいことだけど。そう――私のようなものだって入学出来るのだから。 そして転入生はやってきた。プラチナブランドの髪色、翡翠の瞳は澄んでいて、冬馬同様整った顔立ちは見る者を惹きつけてやまない容姿。 「初めまして、佳弥です。宜しくお願いします」 この学園で名乗っている名前は全て偽名。私を含め。佳弥と名乗った少年は何処か少女らしさを感じさせた。隣にいる冬馬の瞳が見開いていることに今更がら気がつく。 「冬馬、どうかしましたか?」 しかし冬馬は答えない。休み時間になった時、転入生の佳弥は冬馬に近づいてきた。 やはり佳弥も冬馬の顔立ちには惹かれるものがあるのだろうか、まぁ二人が仲良くなったら色々と利益がありそうですしね。周りのおっかけも一石二鳥でしょう。とか思っていると佳弥は冬馬に声をかける。人を惹きつける優しい頬笑みで。 「久しぶり――今は冬馬って名乗っているんだってね」 どうやら私は見当違いの考えをしていたようで、佳弥と冬馬は顔見知りのよう。成程、だから冬馬はあんなに驚いていたのですね。 「お前っなんでこの学園にってかそのかっぐむぅ」 途中まで叫んだその叫びは佳弥が冬馬の口を掌で押さえたことで止まった。暫く佳弥が抑えていると、冬馬が佳弥の手をたたき始めた。呼吸が出来なくて辛いらしい。佳弥は大人しく冬馬の口から手を離した。 「駄目だよ。冬馬。今は佳弥なんだから。私のことは内緒にね?」 不敵に微笑んでいる佳弥の最後の聞きとる。そこに違和感を覚えながらも――もっとも誰にも聞こえないように佳弥は口にしたのでしょうが。 「たく、あとで詳しいこと話せよ」 「うん。そりゃあ僕としても今後の学園生活を円滑に進める為に、冬馬には事情を話すつもりだしね」 後日、佳弥が少年ではなく少女だと知った時、俺は少なからず驚いた。 ▼後書き 佳弥が学園にやってきた当初の話。 李真視点。毎回のことながら李真が地の文だった場合口調をどうするか悩む。そして中途半端な形に……。最後の一文は本性の李真ですが。 |