零の旋律 | ナノ

『オレキミモノ』


※李真と冬馬の話

 眼前にあるのは李真の顔。首元に俺は慣れないナイフを向けている。俺に殺されるかもしれないのに、李真はいつもと同じ表情――真面目で優しそうな顔を裏に、残酷で歪んでいて狂気な顔を隠している。


「そのナイフで私をどうしますか?」

 問われる問い。答えはわからない。
 ただ――何処にもいってほしくなくて。時々思う。いつか目の前から俺の傍から離れていてしまうんじゃないかって。離れない確証なんて何処にもない。不安が俺の胸中を埋め尽くす。笑ってしまうくらい身勝手な願いだ。

「私を殺しますか?」

 俺が返事をしないから、李真は再度問う。答えようとしても言葉が紡げない。息の音だけが李真の耳に届く。 

「俺を殺すか?」

 李真の本性が垣間見える。何も答えない俺にじれったくなったのだろう。李真の本性は知らないなら知らないに越した方がいい程に歪んでいる。

「問題ないよ冬馬」

 何が

「お前が俺を手放そうとも、俺はお前を手放さないから」

 李真は手を伸ばし俺の頬に触れる。不敵に微笑むその笑み。

「例えお前が他の奴を気に入ったとしても。俺はお前から離れるつもりはない。俺がお前のモノであると同時にお前は俺のモノだ。何処にもやらないよ」
「はっ。そうだな。だが君は俺のモノだよ――」

 そうだ。何を忘れていたんだか、俺が李真から離れられないなら、李真だって同じだ。何を臆病になる必要があったのか、ナイフをしまい苦笑いをする。
 どの道ナイフなどあろうが無かろうが同様に必要ない。



▼あとがき
時々冬馬は不安定になり。李真に刃を向けることも多々。
李真は冬馬と一緒のときに本性になる確率が高いです。

冬馬と李真の二人は書いていて楽しい、歪んだ感じ寄りになるけど。







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