零の旋律 | ナノ
V



「…あのさぁ、とりあえずめんどくさい、2人とも。俺からすれば、2人してイチャイチャしてるようにしか見えないんだけど。もうくっついちゃえばいいじゃん、2人とも」

栞が放った爆弾発言に、一瞬その場の時が止まる。
最初に我に返り、声を荒げたのは千朱であった。

「はぁ? てめぇ何ふざけた事抜かしてんだ!?  勝手な事言ってんじゃねぇよ!」

「イチャイチャ…って何?」

水渚に至っては、栞の言っている事すら理解出来ていないらしい。
だがそれもその筈、彼女は色恋沙汰には滅法弱い…というより恋愛が何かも知らないのだから。

「ふざけるも何も、気づいてないのは多分本人だけだと思うけど。いい加減、俺も2人の喧嘩に付き合わされて身が持たないんだよね。それに…」

栞はそこで言葉を打ち切ると、改めて千朱へと視線をずらし彼の顔をピッと指差してみせた。

「何そんな顔赤くなってんの? 千朱ちゃん」

「……っ!」

彼の指摘の通り、必要以上に狼狽える千朱の頬は僅かに赤みがさしており、それが怒りによるものではない事に栞も当然気づいていた。
一方、図星をつかれてぐうの音も出ない千朱は、反論の言葉さえ思い浮かばないらしい。
千朱の反応に満足そうに唇の両端を吊り上げると、今度は水渚にそっとこう耳打ちした。

「…水渚、知ってる? 恋人って、大嫌いな者同士がなるんだよ」

「へぇ〜、そうなんだ? じゃあ僕と千朱ちゃんもなった方がいいのかな?」

「そうそう、早い所なった方がいいんじゃない?」

真顔でとんでもない事をそれらしく吹き込む栞。
一方、水渚は彼の言葉を鵜呑みにしてしまったらしく、ふむふむ、と頷いて見せる始末。

「だぁぁっ! てめぇ勝手に嘘吹き込んでんじゃねぇよ!」

その後、遂に堪忍袋の緒が切れた千朱の怒号が響き渡ったのは、言うまでもない。


END.お題「ひよこ屋」様より、「見てるこっちがもどかしい」


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同盟にて天空朱雀様にお題「見てるこっちがもどかしい」で栞と水渚と千朱の三人を書いて頂けました。

もどかしさと萌えが沢山詰まっていて大好きです…!!本当に見ているこっちがもどかしいです。千朱も水渚も早くくっついちゃえ状態です。愛おしさ満点の内容にニヤケがとまりません。栞の頑張りや味がたまりません…!
最初の背景描写の太陽が、後で喧嘩の理由でも太陽が使われていたりと、描写が凄く丁寧で引き寄せられます!!

この度は素敵な小説を有難うございます。


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