零の旋律 | ナノ
灯里様から「メイドたちの午後」



それはとある昼下がりの出来事。レインドフ家のメイド、リアトリスは箒を片手にふわあ、と欠伸をした。一応手に箒は持っているが、庭は殆ど掃除されていない。
屋敷の主人であるアークは不在だし、執事ヒースリアは主人を迎えに行っている。つまり仕事をさぼっていても誰にも咎められない訳で、真面目に仕事するのも面倒だ。おまけに天気は快晴。こんな時に掃除なんてやってられない。

「どうせ主はまだ帰ってこないでしょうね。馬鹿正直に掃除なんてやってられません。こんなの建前ですよ」

と一人呟きながら箒を振り回すリアトリス。当然それを止める人物などいない訳で、リアトリスの独壇場だ。
もっとも、リアトリスが仕事をしなくても主がそれを咎めることは無いのだが。彼も大外適当である。

「そうだ!」

箒を振り回しながらリアトリスは良いことを思いついたように声を上げる。
どうせ掃除などする気はないのだから、何をやっても同じだ。勢い良く持った箒を投げ捨てると、彼女は最愛の妹の元へと向かった。


リアトリスの最愛の妹、カトレアは色とりどりの花が咲き乱れる庭園にいた。何をする訳でもなく、ただ花を眺めている。
柔らかな風が花びらを巻き上げ、カトレアの長い髪を揺らす。

彼女は恥ずかしがり屋でおとなしい。リアトリスとは正反対で顔は同じなのに、浮かべる表情、性格でこれほどまでに違うのかと言われるくらいだ。
纏うメイド服もミニスカートにロングブーツのリアトリスとは違い、カトレアは袖は腕を隠すほどに長く、スカートから見えているのは靴の先だけ。

「カトレア」

やって来た姉の姿を見たカトレアは返事をする代わりにこてん、と小首を傾げた。その仕草が小動物のように可愛いと思うのはリアトリスだけではないはず。
しかし最愛の妹にはそんな自覚は無いわけで、異性にもてる彼女を守るのは姉であるリアトリスの役目である。

「丁度いい時間ですし、お茶しましょう!」

「……いいの?」

「いいんです、いいんです。どうせ主はしばらく帰って来ませんからね。真面目に仕事するだけ阿呆らしいです」

一応いいのかと尋ねるカトレアにリアトリスは笑って即座にいいんです、と手を振った。主がいない時こそゆっくりするチャンスなのだ。
とその時、リアトリスはぱん、と手を叩いて満面の笑みを浮かべる。

「とっておきのお菓子も出しちゃいましょう! 主には勿体ないですから」

アークが聞いていれば絶対につっこみが入っていただろう。しかしながらこの場にいるのはリアトリスとカトレアだけ。当然、カトレアがつっこめるはずもないため、言葉が返ってくるはずもなかった。
鼻歌を歌いながらお茶の準備を始めるリアトリスは、遠い空の下で主がくしゃみをしたことなど知る由もない。




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灯里様から相互記念にリアトリスとカトレアの小説を書いていただけました!!

カトレアが可愛いです!異性を射抜き、リアトリスが守ってあげたくなる可愛さ抜群の表現にドキドキです^^
言葉の表現が匠で、その場面が鮮明に浮き上がってきます><
リアトリスのアークの扱い方も面白く自然と頬が緩みます……!

相互記念小説有難うございます。



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