零の旋律 | ナノ
Y



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「けっ……やってらんねぇーっての!」

 ピリピリした空気の中での会話が終わった後、部屋に戻ってきた祐未は一人で夜の廊下を歩いていた。テオはもうベッドの中で寝ている。まったくのんきなものだ。わざとやっているのだろうか。
 
「……こんなとこ、はやく帰りてぇよぉ……」

 思わず足を止めて、弱々しく呟いた。会う人間会う人間は一癖も二癖もある連中ばかりだ。妙な執着で生きてるような奴は味方にしても敵になっても厄介だ。関わらないのが一番いい。あのカサネとかいう男は、厄介な臭いしかしない。危険だ。危険だ。祐未の脳がそう叫んでいる。あの男は、この宮殿は、この世界は危険だ。
 
「ならば、早く帰ったらいかがですか?」

 突然声が聞こえて前を向くと、今一番会いたくない人間――カサネ・アザレアが立っていて、彼の横には……青ざめた顔の男が、横たわっていた。


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