零の旋律 | ナノ
V



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 壁越しに聞こえてくる会話に耳を澄ませていたカサネは、二人分の音が途切れた事を理解してゆっくりと身体を動かした。やはり突然王宮に訪れた客人達は、腹に一物抱え込んで接触してきたらしい。彼らの話していた言葉を反芻して裏側に隠された意図を租借すると、この客人達に『今の所』害はないだろうとう判断を下した。おおまかに言うとこの国の様子を観察するのが目的のようだから、直接手を出したりはしないだろう。望む方向に誘導する事はあっても。
 
――その時は、始末すればいい

 今彼らが提供する技術や宝石の類は国にとっても貴重だし、失うのは惜しい。部屋で無防備にはなしていたのも、仮に会話を聞かれたとしても損と得を計算して自分達を追い出しはしないだろう……という算段があったからだろう。まったく、姑息な。最初から信用ならない相手だとは思っていたから、客人の目的も行動もすべて予想の範囲内だ。あとは彼らがどんな動きをするのか、注意深く見張っていればいい。
 軽くため息をついて、カサネは足音を立てずゆっくりとその場を後にした。


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