「どうですか? 異世界の人間との模擬戦、興味深いとは思いませんか?」 テーブルに黒い中折り帽とゴーグル型のサングラスを置いて、その長さを見せつけるように足を組む。黒いコートと黒いスーツに身を包んでおり、浮世離れした銀色の髪と、色素を忘れた真っ白な肌が黒い服に際立っていた。ギラギラと光る赤い目は炎のようで、けれど道ばたの石ころをみるような無感動な色をしている。端正な顔立ちは現実離れした配色も手伝って、彫刻か絵画を思わせる。しかしそれは生きる人の美しさ描いたものではなく、人の世に飽きた誰かが妄想と欲望と願望を織り交ぜ、此の世ならざる魔性を描いた、負の美しさを持つ作品だった。 「私の部下に丁度いい人材がおりますから、紹介しますよ。我々にとっても、とても興味深い模擬戦になりそうですからね」 口元に浮かべた笑みは間違いなく嘲りを含んでいる。赤い瞳は、周りにいる人間全員を端から自分より劣った生き物だと決めつけており、思春期をこじらせた人間のそれに酷似していた。だからこそ負の魅力をたたえる端正な顔立ちと大人びた口調、態度が、殊更アンビバレンツな魅力を引き立たせる。 悪魔 本当にそういう存在がいるのなら、きっとこんな姿をしているのだろう。愛想笑いと解るそれを浮かべ、けれど目の中の侮蔑を隠そうともしない青年に、その場にいた何人かの教師はぶるりと身体を震わせた。 |