「ああ、今日は学年末テストの最終日だったから」 いつの間にか冷蔵庫をのぞき込んでいた栞が、ペットボトルのお茶を手に戻ってきた。一口飲んでからゆっくりと千朱たちを見回す。 「そういう二人は? 休み?」 「俺は午前中だけ」 「僕は午後が休講になったんだ。で、暇だから千朱ちゃんのレポート手伝ってあげてるってわけ」 「頼んでないけどな。しかも手伝うってより邪魔してるってのが正しいだろ」 呆れたように水渚を睨む千朱だが、水渚は涼しい顔で机の本をパラパラとめくる。レポートに使う資料なのだろう。各所につけられた付箋を鼻歌交じりに剥がしてはまったく別のページにペタリと貼り直した。 「あ、こら! またかよ!」 「何度も読んだ方が勉強になるでしょ。ねえ? 栞ちゃん」 「そうかもね」 適当に相槌を打ちながら栞は肩をすくめた。仲が良いのか悪いのかわかりにくいが、これが彼らの日常だった。 「そういえば」 止めるのも馬鹿らしくなってきた栞が適当に雑誌を広げて読んでいると、ふいに千朱がそう切り出した。どうやらちょっとした口喧嘩で終わったらしい。 やれやれと顔を上げた栞の眼前に千朱の指が突きつけられる。 「……何?」 「ああ悪い。お前の制服見てて思ったんだが……水渚も高校までは制服だったんだろ?」 「だったら何?」 栞はもちろん水渚も話が見えずに眉をひそめた。頬をかいた千朱が、二人に促されるように先を続ける。 「いや、どっちだったのかな、と」 「どっち?」 「……ああ」 首を傾げる栞とは対照的に水渚は何かを察したようで、呆れと苦笑が混ざったような顔をした。 「僕が男と女、どっちの制服着てたかってことでしょ」 「そう! スカート姿がいまいち想像できないっていうかさ」 大学で初めて会ってから今日まで、一度もスカートをはいた姿は見たことがない。だから制服とはいえ水渚のスカート姿は考えつかなかったのだ。 「残念。私服オッケーなところだったんだよね」 「……私服。ああ、なるほど」 期待に輝いていた千朱の瞳が一気に曇る。その選択肢もあったかと舌打ち混じりに呟いた。そんな千朱の姿を見てくすくすと水渚は笑う。 つられるように栞も笑みをこぼし、気が付けば千朱も笑っていた。 他人から見れば、少し不可解な友人関係かもしれない。それでも彼らにとっては当たり前で――何より大切な時間なのであった。 END ------ 同盟にて和泉様に水渚、千朱、栞の現パロ小説を書いて下さりました…!! 現パロの魅力が詰まった内容に妄想が止まりません…! 三人の設定も凄く三人らしくて、三人の関係に自然とにやけてしまいます。 どの部分もとても素敵なのですが特に制服の下りが大好きです…!!自然と笑ってしまう面白さやにやけてしまう魅力詰まった小説に何度も読み返して熟読しています…! この度は書いて下さり有難うございます。 |