零の旋律 | ナノ
つげ様から「神は彼を赦したか。」






「俺の物を自由にする。いけないことか?」


貴方が云うのなら正しい。天地が逆さになろうと私の絶対が貴方であるのだから私は首を振る。

「仰せのままに」

私には貴方が神、貴方が天、貴方が



【神は彼を赦したか。】



鈍色の空を破り矢の如く振る雨。それは許しを乞うような雷鳴と稲妻。激しく荒々しく劈く。

「止みませんね、雨」
「部屋の中なら関係ないだろう?それとも何か、出てみるか?」

緩く口角を持ち上げる。

「それがお望み?」
「は、冗談だ。」

それ以上追求しない。云えば従う私を彼は知っているし、ただの言葉遊びで片笑った彼を私は知っているから。
互いの距離は近くない。でも他が踏入れない境界線は自負している。求めて傍にいる。求められて寄り添う。そんな簡単に割り切れるのならば狂う感情を真摯に隠したりしないだろう。私はカーテンを引いた。

「満足したのか?」
「厭きました。様変わりしないなんてつまらない。」
「風情があるだろう?春の雷は」
「まだ冬です」
「暦の上では、だ」

妙にはぐらかされた言葉は終着点を失い彷徨う。真意を知ってか知らずか、その目は徒に開いた文庫本の活字の上を泳ぐのだから全くもう。私の心の臓を掴んで離さないのは貴方じゃないか。どうして全くと悪口を飲み干した。

『様変わりしないなんてつまらない』

何に投掛けたかなんてそれこそ愚問。関係や繋がりに名前を求めるなんて女々しい事この上ない。

「ああ、なんていうか…求められるうちが華ですよね」

これは独り言。だけど彼は一度目を見開いてククッと喉を鳴らした。

「だったら縋りつけ。俺が嫌でも求め返すぐらい無様に」

そう。それでこそ貴方。


私の王。





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同盟にてつげ様に李真と冬馬の小説を書いて頂きました!
文章の一つ一つにくぎ付けです!選び抜かれた言葉の一つ一つが頭の中で余韻として再生されます。
李真と冬馬の会話内容が素敵で気が付いたら黙々と読んでは最初に戻ってまた読んでを繰り返していました。特に最後付近が好きです…!!

この度は書いて下さり有難うございます!


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