零の旋律 | ナノ
昏様から「単純に戯れ」



※BL、暴力表現注意

単純に戯れ

 苛々すると訴えられ、それに答える間もなく李真の世界は反転した。背中をぶつけたのは部屋のカーペット。冬馬の薄い色の髪がさらりと零れ落ちるのを見上げた。
「何ですか?」
「付き合えよ」
「乱暴者は嫌われますよ」
「俺を嫌おうが嫌うまいが君は俺のもの。だから拒否権はいらない」
 冬馬の手のひらが李真の頬をするりと撫でる。呆れたように李真は目を細めた。
 一度短い口付け。深く覆いかぶさろうとする冬馬を手で抑え、李真は身をよじりため息を吐く。
「気分じゃねえ」
「聞いてないよ」
「お前はいつも勝手だなぁ」
「褒め言葉か? そうさ、俺は暴君だ」
 にやりと笑う冬馬に浮かぶのは綽綽とした余裕。その表情が李真は好きだ。しかしたまにそれ以上のことを考える。
「李真、食わせろよ」
「――……」
 その余裕を引き剥がして怯え泣き叫ぶ表情に塗り替えてやったらどれほど面白いか、と。
 李真はかすかに笑いながら答えた。
「条件付きで認めましょう」
「は?」
 不意を突き渾身の力で押し返す。冬馬から逃れ捕まえられる前に蹴り倒した。迂闊に起き上がれないように頭を横から踏みつける。ぎ、と小さな呻きが漏れた。
「……っどういうことだ?」
「俺が下は御免だってこと」
「そんなのお断りに決まってるだろ」
「こちらとしても譲るわけにはいきませんね」
 足に力を込めると冬馬の表情が苦痛にゆがむ。李真の胸の内に僅かな充足が生まれた。
 しかし冬馬もされるがままになるわけではなく、李真を睨み上げながら踏みつける脚を強く握った。爪を立てられきりきりと痛むが李真は構わず体重をかける。
「なあ冬馬、俺お前が好きだよ」
「は、……生意気」
「だからもっと泣かせたいわけ。分かる?」
「――ッ!」
 歪む表情。それでもこの程度では涙を見せてくれるはずもない。余裕の皮を一枚剥げたことにまずは満足し、李真は笑った。
「まあ、今日はこんなところで」
 一瞬にして体重をかける足を引き戻し冬馬から距離を取ると、李真は穏やかな優等生の顔をして部屋の戸に手をかけた。
「甘いものが食べたくなりました。杏仁豆腐を食べなくては」
 その変貌に毒気を抜かれ冬馬が何とか起き上がる頃、李真はさっさと退室していた。残され、鈍痛、部屋は閑散。
「……っあー」
 深々とため息をつき冬馬は髪をかき回した。



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昏様から素敵な小説を同盟にて頂きました。以前「第三点とdは揺るがず」を書いて頂いたときに、後書きに他候補として冬馬×李真×冬馬のCPを考えて頂けて、一体どんな内容になるのだろう、と冬馬×李真×冬馬のリバでリクエストさせて頂いた所、素敵過ぎる内容で書いていただけました!

二人の距離感が絶妙でたまりません!最終的には李真が優勢になるのもまた素敵です。
李真の本性とサド具合がたまらなく私のツボを抑えてはなしません^^どろどろ万歳です…!!
冬馬と李真二人の会話がまた素敵です!

この度は小説書いて下さり有難うございます。


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