零の旋律 | ナノ
炯様から「あまいきょうき」



ふ、と珍しく最近顔見てないな、と思った。

別に見たい訳じゃない。寧ろその逆だ。
会ったら力付くで殴りつけてやりたい。あのむかつく口が二度と開けなくなる位。ふざけた台詞が吐けなくなる位。

別に殺してやっても構わない。大嫌いだから。
この手であいつを闇に葬れる、なんて考えただけで愉しくてしょうがないじゃないか。あいつの苦痛に悶える血みどろの顔を想像するだけでぞくぞくするじゃないか。
久し振りだな、なんて言葉は全部、全っ部後回しにして、まず殴ってやりたい。
勿論、大嫌いだから。

──本当に嫌いなの?

と。こう聞かれたことが何度かあった。
冗談じゃねえ。大っ嫌いだよ。だから現にこうして殴りつけてやってんだろう?、とふざけた言葉の主に吐き捨てるように返し、拳を振り上げるまでがお約束、と言っても良いだろう。

それ位、俺はあいつを嫌ってる。この世に存在する、誰よりも。
嫌いで嫌いで仕方ない。「大嫌い」という一言で片付けられない程、


「大っ嫌いだ、水渚」




──多分。





例えば地平線を染める夕焼けだとか目を覚まし始めた街を照らす朝日だとか薄暗い照明を反射するカクテルだとか道端に芽吹いた小さな花だとか造られたばかりの硬貨だとか美しく煌めく宝石だとか夜空に散りばめられた星屑だとか、あれから見た思いつく限りの『金』を挙げてみても、敵うものは無いと思う。

──金色の、髪と眼。

あーあ、なんか思い出すと殴られた傷が疼くなあ、と今更痛むはずもない腹部を摩ってみたりする。

これだから大っ嫌いなんだよねえ。
……君のことだよ、千朱ちゃん。

聞こえてるかい?そういえば暫く顔見てないけど。
どうせ会った所で殺り合いになるのは十二分に承知してるし、お望みなら着火してあげても構わないよ?

その時は、あの日みたいに言ってあげるからさ、

──やっぱり、綺麗だよねえ、その髪と眼。
色んな『金色』を見たけど、やっぱり君がこの世で一番綺麗だったよ。

って、ね?

そしたら、きっと吐き捨ててくるだろう言葉は、
僕からも、おうむ返しにしてあげる。

そう、いつもみたいに。


「大っ嫌いだよ、千朱ちゃん」




──多分、ね。






あ ま い き ょ う き
(僕等は自分にまで嘘をついているのだろうか)



お題:虫喰い

──
同盟にて炯様に水渚と千朱で狂愛を書いていただけました!

素敵過ぎる内容に、興奮を抑えきれず思わず「のおおっう!」と叫びそうになったのを抑えて心の中で数度叫んでいました←
その場の情景が浮かんできてはニヤニヤしています。水渚と千朱二人の視点があり、もう興奮です。一度で二度美味しい!二人とも最後に――多分 とあるのが悶えます←

この度は小説を書いて下さり有難うございます。


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