あたたかな空気が緑を掠めて流れていく。 バスケットにたくさんのサンドイッチを詰め込んで、私は銀を追いかけた。「ピクニックがしたい」と唐突に言った銀は、私に弁当を作るように言うと待ちきれない様子で出て行ってしまった。私にしか見せないそんな様子が、嬉しくもあり切なくもある。とにかくピクニックの準備、と私はせっせとサンドイッチを作ったのだ。 大きな木のもとへ走っていった。あたたかい心地に気分もほっとあたたかくなる。目当ての姿を見つけ、私は急いでそこを目指した。 「銀!」 そこにいた銀は、木の根元に腰かけて目を閉じていた。急きすぎて眠くなってしまったのだろうか。 「銀?」 目の前に立ってみても、銀は一向に動かない。どうしたものかとかがみながら声をかける。 「寝てしまったのですか?起きてくださ――」 い、と言いかけたところで唐突に動いた。にゅっと手が伸びてきて体を倒される。気付いたら、しっかり目を開けて笑っている銀の膝の上に私はのせられていた。 「遅いぞ、翆」 「銀……!?お、驚かせないでください!」 突然のことにどきどきと心臓が鳴っていた。銀はとても楽しそうな様子だ。 「待ちくたびれた。早く翆の飯が食いたい」 「わかっていますよ。これ、サンドイッチです」 右手に持っていたバスケットを見せると、銀はようやく私から手を離した。バスケットを代わりに預け、私は銀の隣に座る。 バスケットを開いてサンドイッチを取りだした銀は、やわらかく顔を綻ばせた。 「翆のサンドイッチ、久しぶりだ」 「そうですか?言ってくださればまた作りますよ」 掴んだサンドイッチを嬉しそうに頬張り、銀がおいしいと呟いた。私はそれが嬉しくて、自然と笑いながら私の料理を食べる銀を見る。 「翆の料理は、おいしい」 「だって、ほかのものは食べないじゃないですか」 「違う。翆のは、誰のよりおいしいに決まってる」 きれいな長い銀髪を揺らし、銀の視線が私に向いた。 「あたたかい味がするんだ」 そう、一言。 素直な好意が嬉しくて、それでも、切なくもあって。ふわりと笑い返す奥に、ほんの少し願いを込めてみた。 君と分かつ春日--- 同盟にて昏様から銀(怜都)と翆(海璃)の小説を頂きました! ピクニックの話を銀と翆でお願いしたらこんなにも素敵な小説を描いて下さいました!!内容にドキドキです^^ 翆の心境や銀の行動と依存等などに何度も読み返して昏様の小説に浸っております← この度は小説を書いて下さり有難うございます! |