―ナヅキ― どうかしたのか。 そう尋ねても、奈月は何も答えなかった。 ただ、その紅い瞳でじっと俺を見ている。 さっきからずっとこの調子だ。 ほんの数分前、用を済ませて部屋へと戻ってきた俺を迎えたのは、亜月を抱いて床に寝そべっている奈月だった。 何かあったのかと思い、声を掛けてはみたが、返事はない。 俺はとりあえず奈月の側に腰を下ろして、奈月の様子を伺うことにした。 奈月は亜月の顔を撫でながら、時折俺に視線を寄越す。 俺はそんな奈月に向かって手を伸ばし、もう一度どうかしたのかと声を掛けた。 「かまわないで」 奈月に触れようとした時、ぴしゃりと告げられたその言葉が、俺の動きを止めた。 「僕なんかどうでもいいくせに。愛せないくせに。構わないで。優しくしないで」 ついさっきまで一言も口を聞かなかった奈月から、ぽろぽろと零れて出る言葉。 俺は行き場を失った手を膝に置き、ふっと息を吐いた。 「構うよ」 俺は、奈月を真っ直ぐに見つめて言う。 「お前が何言ったって、俺はお前のことほっとけないから、構うよ」 奈月が納得してくれるかは分からなかったが、俺はただ自分の気持ちを正直に伝えた。 そして暫くの沈黙の後、俺は再度口を開く。 「腹、空いてないか?何か食いたいもんあったら言えよ」 「………パスタ」 その消え入りそうな声で告げられた注文に、俺は笑って返事をした。 END ------ 同盟にて、春海様に奈月と閖姫の小説を書いて頂きました…! 奈月が可愛くて、何度も密かに可愛いと心の中で呟いていました← 閖姫の男前具合素敵です…!奈月と閖姫の雰囲気に終始ニヤニヤです^^ この度は小説を書いて下さり有難うございます。 |