仕事を片付けて睡眠不足による回らない頭を抱え泉が自宅へ引き上げると、敢えて視力を悪くさせたいとしか思えない状況――足元のカンテラひとつが唯一の光源――で、律が黙々と自分の得物である鎌の手入れをしていた。 無視してベッドに潜り込んでやろうかと思ったが、彼が傍に居て作業をしていると思うだけで嫌な予感が去来し、面倒事に巻き込まれる前に余計な芽を摘んでしまうことにする。 「……律、こんな夜中になんだ」 「ああ、お帰り」 声を掛けて初めて泉の帰宅に気付いたらしく、眩しそうに眼を細めて律が言う。 意外な程呑気な調子に肩が重くなり、泉は仏頂面で彼の隣に近寄った。身の丈ほどもある大鎌を膝に乗せ何かしている律の瞳は、いつも以上に暗く光っている気がする。 見て見ぬ振りをするのも憚られ、かといって再度『面倒事』の返事があると知りながら、渋々口を開く。 「……それで。何をしてるんだ、律」 「見てわかるだろう? 武器の手入れに決まっている」 「だから、」 「刃が敵に触れた途端命を刈るような、凶悪な機能を追加予定だ」 「…………そうか」 長い沈黙の後それだけを呟いて、泉はさっさと寝ることにした。 訊くだけ訊いて寝室のほうへ身を翻す彼の背後に、サディストの声が掛かる。 「成功したなら、泉の鞭にも似たものを加えよう。一段と楽になる」 「いい、いい。遠慮しとく」 果たして、その機能とやらの付随に失敗すればいい、と密かに思いながら。 ------ 同盟にて常盤様に律と泉の小説を書いて頂きました! 律の危険さ具合が存分に発揮されている内容に一人舞い上がっています^^律はサディストすぎますね!そしてそんな律と、律と比べたらまともな思考をしている泉とのやりとりが楽しすぎます!! この度は小説を書いて下さり有難うございます。 |