「これが…? っつか、玉子焼きって言ったら普通もっとふんわりして、黄色いものなんだが…コレ、やけに焦げ臭いし黄色のきの字もねぇぞ」 ある意味尤もな感想を口にする篝火。 朔夜、斎の2人も、篝火の意見には賛同しているようだ。 郁も自分の料理の腕前の酷さには自覚があるようで、皆の反応も当然と諦めたらしく玉子焼きが乗った皿を引っ込めるとげんなりした様子でこう呟いた。 「やっぱりこれも駄目か…。どうやったら料理が上手くなれるんだろうか…? 毎日作ってんのに」 郁の悩みと疑問も、ある意味至極当然の事。 腕を組みながらう〜ん、と唸っていた篝火であったが、ふと何かを思いついたように手をポン、と叩いた。 「そうだ、ちゃんとレシピ見ながら作ればいいんじゃねぇか?」 「…いや、レシピならちゃんと見てるし、この玉子焼きもレシピ見ながら作った」 「え、これで…? っていうか、玉子焼き如きにレシピなんかあるんだ…」 無駄に自信満々に言い切る郁に、何処か突っ込みどころが違う斎の発言。 レシピを見て作ったのにこの出来では、最早手の施しようが無い…というより料理は諦めろ、と諭したくもなる。 郁以外の3人も、これ以上破壊兵器という名の料理を作らないで頂きたいと願うばかりだ。 「…にしても、ホントに郁の料理は上達しねぇな。ある意味それも才能なんじゃねぇか?」 「そんな才能を授かるくらいなら、料理を上手く作れる才能が欲しかったよ」 最早、朔夜の言葉も励ましているのか貶しているか分からないくらいだ。 溜息交じりの反論をする郁の意見も、妙にリアリティがあって余計哀愁が漂う。 |