「……は? 何人に石食わせようとしてんだコラ」 「まさか、朔に石食べさせる訳ないだろう? これは郁の手料理だって」 ──瞬間、朔夜の中で何かが切れた。 「ふざけんなこんなモン食えっか!」 がしっとチョコを掴み、何をするかと思えば遥か彼方へと力の限りそれを投擲する郁。 哀れ郁の手作りチョコは、窓を突き破り遠くへ飛ばされて見えなくなってしまった。 「なっ…何やってんだ朔夜! 折角私が作ったのに…食べ物を粗末にするな!」 「は? ってか、折角の食材をあんな石に変える時点で、食いモン粗末にしてんじゃねぇか」 すさかず郁が朔夜を窘めるが、如何せん悲しい事に朔夜の言い分にも一理あるのだからやるせない。 何となく微妙な空気になりかけた所で、話を切り出したのは郁であった。 「まぁいい…皆に試食を頼みたい料理はまだあるんだ」 まだあるのかよ…!? …と言いたい気持ちを抑えつつ、せめて噛めそうなものならまだマシか…と大分ハードルの低い要望を心の中で祈る3人。 そこで郁がおもむろに差し出したのは、真っ黒に焦げた物体…であった。 「……? 何だコレ?」 「石炭だろ、黒いし焦げてるし」 「いや、むしろ消し炭?」 物体を覗き込みつつ、梳き放題抜かしまくる3人。 当然、この発言に郁が怒りを覚えない筈もなく。 「違うっ! 何故そうなるんだ!? 見て分かんないか、玉子焼きだ!」 「え…?」 玉子焼きと言われ、改めてその黒焦げの物体をまじまじと眺める3人。 だが、何処からどう見ても、玉子焼きの原型すら無かった。 |