やっぱり…と篝火と斎は心の中で絶望しつつ、何とリアクションを取っていいのか分からず呆然とするばかり。 そんな2人の内心を知ってか知らずか、郁はさらに言葉を続けた。 「そりゃ、自分の料理の腕前くらいは分かってる。でも、誰かの客観的な意見も必要だと思ってな。…って事で、とりあえず見た目だけでもチェックしてくれ」 有無を言わさず郁は捲くし立てると、自分が作った料理をずい、と2人の前に差し出した。 途端、2人の中で止まる空気。 「……いやいや、コレそもそも食い物か?」 「あ、当たり前だろうがっ!」 「いやーだってコレ…石じゃね?」 すかさず突っ込みを入れた斎が指差した先にあるもの。 それは、皿に盛られた真っ黒い石…らしきものであった。 黒光りしていて、どう見たって固そうな物体。 すると、2人の反応に苛立ちを覚えたのか、郁が声を荒げながら弁解に走った。 「違ぇよ! チョコだチョコ! どー見たってチョコだろ!?」 「いや、どー見たって石ころなのだよ。なぁ篝火?」 「ああ…郁には悪ぃが…俺には到底食い物には見えねぇ」 作った本人を目の前にしてここまで料理を扱き下ろすのは失礼極まりないが、出来た料理がここまで酷ければ、文句の一つでも言いたくなるものである。 しかもそれを食えというのだから。 「ともかく、見た目はアレだが味はそんなに悪くない筈だ。ちゃんとした材料を使ったんだから」 それでも尚、食い下がる郁。 だが、ここで最大の疑問が篝火の脳裏を過ぎる。 「ってかこれ…相当固そうだがそもそも噛めんのか?」 「じゃあ、篝火が身をもって試してみたら?」 「いやいや無理に決まってんだろ…ってか何で俺が食うの前提になってんだよ?」 にっこりと朗らかな笑顔を浮かべつつ、とんでもない事を抜かす斎にすかさず突っ込みを入れる篝火。 すると、何を思ったのか篝火はチョコらしきものをおもむろに持ち上げて見せた。 |