零の旋律 | ナノ

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 その日はそれで解散した。
 軍師である僕の仕事は多い。征永のことについては、ぶっちゃけ仕事の範囲外だしね。

 そして、数日後軍人の捜査のかいがあって犯人が捕まった。
 その知らせを意気揚々と持ってきたのは荒勢君だった。此処数日ですっかり僕に慣れた模様。部屋にも結構堂々と入ってくるし。
 でもその犯人像をきいた時、僕は冤罪だと確信した。
 犯人は犯行を否認している。軍は彼が犯人だと決めついているけれど……まぁ証拠もあり、アリバイもなく動機も充分としていたら見つかるよね。
 でも――証拠があることはなんて可笑しいことなんだろう。
 あそこまで徹底的にやっておいて、今さら証拠が見つかるなんてことはありえない。

「んじゃあ、今日は征永の家にいこうか」

 今日の仕事はもう終わっているからフリーダムに出来るしね。
 征永の屋敷に辿り着きこの間と同じように入る。僕の軍服を見れば誰でも敬礼して通してくれる。便利だよね。再度屋敷の中を確認して、やっぱり確信する。彼は冤罪だと。

「……犯人があっさり捕まりすぎるよ」
「良かったのではないですか?」

 まだ、荒勢君は彼が犯人だと信じているみたいだ。まぁあれだけ彼が犯人だという証拠がそろっていれば無理もないのだろうけど。

「違う、あれは無罪だ。僕の直感でしかないけど」
「その直感の理由を伺っても?」
「うん。しいていうなら、当てはまりすぎている。犯人の条件に合いすぎている。それにおかしいのはそれが後だしじゃんけんのようなものだから」
「後だしじゃんけん?」
「そう、後だしじゃんけん。こっちの手を見たからこそ、対策を練ったって可能性もあるってこと」

 後から証拠がわんさか出てきた、そこが今回の怪しむべきところ。
 そこまで一気に証拠が出てきて、事件が急転直下の解決をするのなら、最初から出てきたって不思議じゃない。ましてや、事件発生から数日だけ。

 ……此処まで完璧に仕上げておいて。それでってのはおかしいんだよ。
 僕が見て、“此処まで完璧”にって思ったのだからね。


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