零の旋律 | ナノ

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「んーこれ相当テダレだねぇ、一度や二度のレベルじゃないよ。何度も殺して殺し慣れている」
「猟奇的殺人では?」

 顔を青くしながら、荒勢君は僕の独り言に返してくる。多分殺された人のことを思って感情移入をしたんだね。僕には出来ない。荒勢君それの感情はまだ踏み込んでいない証だよ。
 その感情は大切にしなければならないよ。

「いんや、違うよ。別に無差別殺人犯ではないねぇ」
「何故?」

 荒勢君は首を傾げる。動作も表情も同じだからわかりやすくていいね。

「だってさぁ、ここ魔術無効化の警報術式があちらこちらにあるじゃん。誰かが術を発動しようとしただけで結界にとらわれるんだよ」
「なら、術を一切使わなければいいのでは?」

 まぁ、そうだろうね。
 術が使えないなら術を使わなければいいだけ。屋敷に侵入する際に必ずしも術を使用する必要することもないしね。でも――

「何言ってんの術だけの防犯システムしか設置しない理由は何処にもないじゃないか」
「あ……」

 征永の屋敷の魔術無効化警報術はタダの目くらましでしかない。
 魔術を使わないで室内に侵入出来たとして、あちらこちらに侵入対策の物が大量に設置されているのだから。そんなトラップ達に一切引っかからないということは、つまりそれが素人じゃないことの証明。
 もっとも、此処までの技術がを持つ者が相手ならば、誰だって判断させるのは難しいことなんだけど。
 どれか一つだけに特化していてくれればそこから痕跡を探すことが出来たのに。


「だから、目先だけの防犯にとらわれない。つまりプロフェッショナルだよ」
「しかし、それだけでは……」
「それに、魔術無効化警報術を作動させない、さらに他の防犯システムを一つも作動させていないってことは、魔術に関しても並大抵の技術じゃないってこと、さらに他の面に対しても一つ一つが秀でているよ。無差別殺人じゃない、これは私怨だね。それにその辺の素人がやったわけでもないよ。素人なら防犯システムを作動させる。それにそれだけじゃない」
「というと?」
「賊に見せかけて態々金品を盗んでいることも態とらしい」

 引き出しの中身を空けてみたけれど、金目のものだけが盗まれている。
 他の高価に見えるだろう時計とか(実際は見た目だましの代物。悪徳商法にでも引っかかったかな)一件素人ならば分からずに盗みだしそうなものは盗んでいない。
 それに――足がすぐ付きそうな限定もの、ネーム入り、そう言った品は持ち出していない。
 一体いくつ知識があるんだよ。全くこういうのが犯罪者になると性質が悪くて嫌になるよね。そしてそういう奴に限って捕まらない――。


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