零の旋律 | ナノ

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 だから、二人の敵となるものがいるのなら、俺はどんなことだってする。
 偽りじゃあない。
 
 過去も未来も現在も――


「まっ天才軍師から言わせればそれは未来のことでもあるんだろうな」
「……」
「天才軍師水波瑞(みずは なお)は策士。未来におこるだろうことを、予測してそれをその通りに動かすことに長けた存在なのだから」
「まっ、どんなんでもいいよ。俺のイラつきはもう消えたし」
「そうか」
「まぁ、久々に郁と泉に会えたしね」

 泉は呆れたようにため息をつく。それもそうだろう会わなかったのは俺が会いに行かなかったからだ。
 泉と郁は滅多なことがない限り外出することはない。広い屋敷の中で引きこもっている。
 二人に会いに行くためには俺が足を運ぶ必要があるのだが、今回は天才軍師を相手にすることを優先した。証拠は何一つ残していないといっても、何処かで何かミスをやらかす可能性は零ではないのだ。

 人は失敗を犯す生き物だというのならば、そして俺自身失敗をしないわけではない。
 泉を相手にすれば作戦面では泉の方が上手だし、もとより策を練ることを職業としている天才軍師が相手ならなおさらのこと。油断は禁物。此方がそれが専門でないならなおさらのこと。

「なら、久々にお前が料理を作れ。そして郁に料理を教えろ」
「十二歳の子に料理を態々伝授しなくてもってか、郁に料理を教えることは無謀極まりないよ。それなら銀と泉を和解させる方が簡単な作業に見えてくる」
「俺と銀の仲の悪さは郁の料理以下かよ」
「うん。因みにカイヤと汐の仲の悪さも郁の料理以下」
「どんだけ最強何なんだよ、妹の料理は」

 泉は僅かに顔を綻ばせ苦笑する。

「泉と銀、カイヤと汐に仲良くしてもらうのとカイヤには実験を止めさせる方が簡単なレベル」
「最悪じゃねぇかよ」
「因みに、仲良くしてもらうのと、実験を止めさせるなら街一個潰す方が簡単なレベル」
「基準がわかりやすいようでわかりにくいっての」

 そういいつつも泉も俺の言ったことを何一つ否定しなかった。
 勿論肯定もしなかったが、否定か肯定かで問われれば肯定だろう。

 それほどまでに彼らは仲が悪く、そしてそれ以上に郁の料理センスはすさまじい。天性の才能といってももはや過言ではないレベルだ。もっともそう言われても嬉しくもなんともないだろうが。


 そうして、時が過ぎていく


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