律サイドT ――きっと、この結末だけは変わらない この先何があったとしても 変わらない、変われない、変わるつもりなど毛頭ない 「泉、わかっているんだろ? 何故殺さない」 扉付近の壁に腰をかけ、腕を組み目の前で椅子に座り作業をしている人物に声をかける。 自分の唯一の主で親友、そして守りたい存在は、椅子に座りながら目をつぶっている。一見すると寝ているように見えるが、寝てはいないし今はその存在にとっては情報を聴く時間。 「……別に誰もかれもを殺す必要はない」 「甘いねぇ、敵愾心を持っている人物を生かしておく必要はない」 今、自分の主――玖城泉をある貴族の輩が抹殺しようと計画を練っていた。 勿論、そのことを泉は知っている。情報を司る玖城家の前で、隠し事は不要。 「そんなことしたら、世界の人口が3分の1くらいに減るだろう」 半ば大げさに泉は答える。 俺にはそれが不満で仕方なかった。敵ならば殺せばいい、それだけだ。 なのに何故“殺さない” 今まで何人と殺してきた、すでにその手は血濡れている。なのに今さらそれを躊躇する理由は何処にも存在しないはず。 「別に俺は構わない。そこに……お前と郁が生きていてくれるならば」 生きていてくれるならば、例え誰が死のうが構わない。 いや、誰がというのならば泉と郁、そして俺自身もその枠に入ってしまうというのであれば、別だが。 ――何故、泉お前は今回人を殺すことを躊躇する そんなもの今さらでしかないのに この手は数多くの血にまみれてきた。 「……まぁ、いいや」 俺はそう言って部屋を出る。扉を丁寧に占める。特に泉は何もいない。扉を背にして心の中で呟く 「(お前が殺さなくても……俺が邪魔ものは全て殺す)」 すでに手遅れ すでに狂った それこそ、罪人の牢獄で生き伸びた罪人の中の罪人たちが可愛く見える程に狂った。 [*前] | [次#] TOP |