V 「なんだ?」 泉は案外普通の口調で問いかけてくる。此方のことを全く信用していない雰囲気は伝わってくるが。それでも泉から敵意は感じられなかった。 「俺たちは罪人なのに、郁が此処まで一人出来ても良かったのか?」 「あぁ、別にたかが盗人のところにいったところで支障はないだろう。朔夜は論外だし」 「俺は論外扱いかよ!!」 思わず座っていた椅子から立ち上がり、机に手をついてしまう。 「あぁ、論外扱いだ。理由教えてやろうか?」 ――聞いてはいけない 咄嗟に本能がそう判断する。朔夜は大人しく椅子に座る。 「それが利口だろうな」 相変わらず真意の読めない表情を泉は見せる。 真意等見せるつもりは毛頭ないのだろう。 「って、待て俺が盗人だったって知っていんのかよ」 朔夜に先を越されたため少し遅れて篝火が驚きを口にする。昨日、この男の情報能力を間近で聞いていたがそれでも、驚いてしまう。 「あたり前だ、そもそも怪しい……郁に害がありそうな犯罪者だったら、俺が最初に殺している。生き残っているってことは害がないと俺が判断したからだ」 「うわぁ……なんだか、あんまり嬉しくないが、盗人のお蔭で今俺は生き残っていると考えればいいのか?」 「それを幸とするかしないかはお前次第だ」 「どうも……」 「それにお前は丁度好さそうだしな」 「何がだよ」 絶対に真っ当なことではない、直感が、長年の経験が篝火に告げる。 「まぁ、後々わかるだろう」 今わかってくれた方が後々にいいと思うのにこの男は肝心なことは何一つ語らない“対価”がないからだとでもいうのだろうか。 後日篝火は泉が言っていた意味を理解した。 そうして、篝火は徐々に保護者になる人数を増やしていく。 [*前] | [次#] TOP |