U 「にしても。泉は何だありゃ、榴華とあそこまで対等にやれんの初めて見たぞ」 榴華がこの街に来てから結構立つ、そして榴華の戦闘を何度も朔夜は間近で見てきた。 榴華が押されているところなんて殆ど見たことがなかった。あのまま勝負を続けていたら一体どちらに勝敗が傾いていたのか朔夜には想像すらつかない。 どちらにしても街に甚大な被害が出ていたことは明白だろう。 罪人の牢獄支配者が止めなければ。 「兄貴はまぁ、強いさ」 それだけで郁は片付けたが、郁にとっても説明のしようがなかったのだ。 必要以上のことを語るつもりはない。知り合って二日の人間にだ。 「どんだけだよ」 「さぁ、な。……まぁただ」 そこで郁は言葉を濁す。 その時、今度はインターホンがしないでドアが開いた。 そして足音二つ。二つ、に顔を顰める篝火と朔夜。 一人は榴華だろう、榴華らしい足音がする。 昔朔夜は榴華が尋ねる度に榴華な足音がすると篝火にいったことがあった。 最初、篝火は一体足音に何処までの違いがあるのか理解が出来なかったが半年たった今ではわかる。 道化を気取っているのか、榴華の足音は何処か独特だった。何が他の足音と違うと問われれば篝火は明確な答えを用意出来ないだろう。けれど榴華の足音は榴華だと相手に判明させるものを持っていた。 榴華と現れた人物は柚霧ではなかった。第一柚霧だとは二人は予想していなかった。 しかし現れた人物は予想外すぎた。柚霧の場合黙ってここまで入ってくることはしない。お邪魔しますと丁寧に言葉を最初にいってから入ってくるからだ。 「いずっみ!?」 「兄貴!?」 二つの声が重なる。郁以上に真っ黒で全身を覆う情報屋が目の前にいた しかも昨日死闘を繰り広げた相手と一緒に。二人とも険悪な雰囲気は出していない。 利害の一致でもあったのだろうか篝火は思わず勘ぐってしまう。 「何しに?」 一番驚いたのは郁だったのだろう、郁が真っ先に兄に問う。 「郁がいるから迎えに来た」 「私は一人で戻れるぞ?」 「それと他にも要件があったからだ」 「そういえば……」 篝火は口にはさむ。 泉は昨日みたばかりで直接的に言葉を交わしたわけではない。しかし榴華との会話で聞こえてきた言葉を推測するに郁のことを泉は非常に大切に思っている。 ならば罪人である自分たちの処にいて、泉は何も思わないのだろうかと。 [*前] | [次#] TOP |