X 「第一の街榴華、その秘書的存在として柚霧がいる。そして第二の街は結界にたけた結界術師雛罌粟(ひなげし)年齢は13前後の少女だが、実年齢ではなく、術によって外見を変化させているに過ぎない。その部下に蘭舞(らんまい)凛舞(りんまい)の双子。第三の街支配者は水波。鞭を使う隻腕の人物だ。和服と洋服を合わせたような変な組み合わせの服装を好んでいる。そして最果ての街支配者梓。血を見るのが大好きなやつだ、で、最後は罪人の牢獄支配者銀髪。御満足か?」 不敵に笑うその笑みの邪悪さに、榴華は思わず数歩下がってしまう。 全て――正解だ 何も間違えていない。 この男の情報能力は異常だ。 確かに各街にも情報を職業とした情報屋は存在していた。その情報屋から榴華も時々情報を得ることはあった。だが、この男はその情報屋達とは異質している。逸脱した存在だと理解した。 一体何者、そう言った疑問符だけが次から次へと、とどとめなく溢れだしてくる。 「他には何か気になることはあるか?」 「……いいよ。自分はまぁ仕方ない。ただし条件がいくつかあるよん」 「なんだ?」 「この街に住む以上――柚霧に害を与えることは許さない」 有無を言わせない雰囲気を放つ榴華に、そこいらの罪人ならばただ縦に首を振ることしかできないだろう。しかし泉は違う、他の罪人より一線を画していた。だから榴華の雰囲気にもただ口を歪めるだけ。 榴華はそれを肯定と受け取って話を進める。 「部屋とかは容易してやるよ……最後にもう一度お前は何者だ」 本来榴華は他人の素性を聞くような真似をしない。 此処は罪人の牢獄罪を犯した人が送られる死の大地。 罪人の過去を暴くことを榴華は好まない。勿論柚霧が関わってくる場合は違うが。 だから榴華が此処まで他人の素性を問うことは初めてだった。 それほど泉という人物が規格外なのだ。 「情報屋だ、漆黒を纏いしな」 結局泉は何も答えない。否、最後の言葉だけ、泉は自分が何者であろるかを語っていた。ただしそこ言葉は声に出していない、口を動かしただけ。読唇術があればその言葉を聞き取ることが出来ただろう。だが榴華は読唇術を使えるわけではない。先ほど自分の名前を泉が言った時はその言葉が馴染み深いものだったから理解出来たに過ぎなかったのだ。ただ、それだけのこと。 銀髪だけは意味ありげに笑ったのだが、それに気付いたのは泉と、泉の後ろにいた郁だけだった。 そしていつの間にか銀髪はその場から姿を消していた。ただ朔夜だけがいなくなったことに気がつき寂しそうな顔を一瞬だけしていたのを篝火は見逃さなかった 「(何か……あるのか?)」 [*前] | [次#] TOP |