V いつの間にか榴華を包み込んでいた紫電は姿を消している。紫色の変貌していた瞳の色も今は元の色に戻っていた。 「何故、邪魔したんだ?」 しかし、緊張と警戒はといていないのだろう、榴華の口調が元に戻ることはなかった。 何時でも臨戦状態になれる、ということなのだろう。 そして、第一の街の支配者であれば、全てを統括する罪人の牢獄支配者は“上司”と言っても過言ではないはずの相手だった、しかし榴華から罪人の牢獄支配者に対して尊敬の念は全く篝火には感じ取れなかった。 「そりゃあ、榴華と泉君がこの街で暴れられたら困るから、それにしても流石だね。榴華相手だと流石の泉君も本気を出さざるをえないか」 「そりゃあな」 泉は榴華の本気を最初から、能力を始めから知っていたというのだろうか、その口ぶりに榴華は顔を顰めるしかなかった。 この男は一体何者なのか。 ――化け物 榴華は心の中でそう呟く。口にしないのは、口にしたくない理由があるから。決して泉を気にかけてではない。その言葉は嘗て自分がかけられた言葉、耳にしたくない言葉、嫌いな言葉だったからだ。 好きで、こんな力を保有しているわけではない。この力は誰かを傷つける為のものだったから。 力が制御出来る“今”ならまだしも、“昔”はこの力を制御できず、相手を傷つけてきた。 「で、お開きにはしてもらえるのかな?」 「それは、お前ら次第だろ?」 「そりゃあ、そうか」 銀髪は口に手を当てて笑う。それが純粋におかしいから笑っているわけではないことは、この場にいた誰もが理解出来た。 「じゃあ、榴華。泉君は殺さないでね。まぁいくら榴華といっても泉君を殺そうとするのは相当骨が折れることだろうけど」 「お前とそこのやつは知り合いなのか?」 誰もが疑問に思っていることを口にする。 「ひょっとして……此処に来る前からの知り合いとか?」 篝火は一番に思いつく可能性を口にする 「いや、それは絶対ない」 しかし、その一番あり得そうな可能性を朔夜はすぐさま否定をした。それも絶対という言葉を使ってまで。 「なんでだ?」 篝火の疑問には答えない。 朔夜は知っているから。だが、それを篝火に教えることはしない。教える為にはまだ付き合いが短かった。 「……(何もんなんだ、泉って野郎は……)」 [*前] | [次#] TOP |