零の旋律 | ナノ

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 黒と紫、闇と紫電がぶつかり合う。

 その時

 銀色の粉が闇と紫電の中心で舞う。
 花弁のように銀色の粉が宙を蠢く。
 それは見る者に現実と幻の間を彷徨わせるような魅力を持ち

「ぎん……いろか」

 闇と紫電は、銀色の粉に相殺される。
 辺りは静まり返る。
 榴華も泉も何も言わない。息をのんでいた篝火、朔夜、郁そして罪人たちも何も言わない。
 何が起こったのか理解していないのだ、一部の者を除いて。

「まさか、罪人の牢獄支配者が出てくるとはな」

 最初に口を開いたのは泉だった。
 銀色の粉が待ったその中心から、一人の人物が現れる。
 腰まである銀髪を揺らし、青い瞳が双方を見る。
 ベージュの上着に、薄い紫色のマフラー。マフラーを止めるように蒼い球が右側についている。
 腰には銀色のサーベルを帯刀していた。

「まさか、君が此処に来る方が予想外だったけどね、泉君」

 その人物――罪人の牢獄支配者、通称銀髪はやれやれと肩をすくめながら微笑する。
 知りあいなのか――誰もがそう思った。

「郁を傷つける存在処に、何故いなければならない」
「それもそうだけどね」
「だから。この街にきた、文句はあるか?」
「いや、いいんだけどさぁ……榴華と激突しないでよ。第一の街を滅ぼすつもり?」

 苦笑するが、銀髪の瞳は笑っていない。
 突然の罪人の牢獄の支配者の登場に、篝火は驚いた表情でその人物を見ている。まるで品定めでもするかのような――

「あれが、罪人の牢獄支配者なのか」
「ん? あぁ、お前会ったことないのか。そうだよ」

 篝火にとって、罪人の牢獄支配者を見るのは初めてのことだった。
 存在があるのは知っていた。だが、噂でしか聞いたことのない存在。
 正直言ってしまえば篝火はもっと、老人の予想をしていた。
 しかし。目の前に現れた人物は自分よりは年上だが、そこまで年が言っているわけではない。
 二十代中ごろ前後に見える。
 そのような若い人物がどうやってこの荒くれ者が集う罪人の牢獄を支配しているのか興味がわかないわけではない。実際本物なのだろう。
 榴華が攻撃することもなく、ただ突っ立っている。


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