零の旋律 | ナノ

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「簡単だろ? この街が住みやすいように、障害となるものを片っ端しから消していけばいいだけの話」
「……」
「邪魔になる存在を態々生かしておく必要性が何処にある?」

 邪魔ならば殺せばいい、その“方程式”に榴華は否定はしなかった、だが肯定もしない。
 榴華自身、柚霧の障害となる存在がいるならば黙ってはいない。
 柚霧を傷つけるものは全て破壊する、そういった決意が榴華の中にはある。
 “それ”とこの男は同じ思考を持っているのだろうか。

「お前だってそうだろう?」

 見透かされたように――

「あぁ、そうだろうな」

 榴華は同意する。榴華が柚霧を大切に思うならば
 この男は郁を大切に思っているそれだけ


「……(結局人は大切な誰かの為にしか行動出来ないってか)」

 心の中で一人榴華は呟く。
 そして榴華は一つの覚悟を決める
 この男は将来柚霧の障害になる存在――

「……朔夜、離れておけ」

 榴華は朔夜に声をかける。榴華のその瞳に朔夜は唾を飲む。
 榴華が“本気”になる。
 この第一の街――否、罪人の牢獄“最強”とも謳われる榴華の本気が今見えようとしていた。

「ほう、流石と言ったところか」

 泉は感心する。榴華の周りには無数の紫電が稲妻を散らす。
 そして榴華の身体は紫色に発光を始める。紫電が榴華を中心に集まり、榴華自身に力を与えているのだ。
 榴華の瞳は緑色の瞳から紫色へ変貌していく――
 この連続殺人事件へ終止符を打つために

「流石に、それは少しきついか、郁……少し離れていろ」

 泉の闇が垣間見える。
 泉の鞭はいつの間にか宙に離散している。

 黒は黒を、黒い粉を無数に散らす。


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